ミステリー
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ミステリー 2019年03月16日 23時00分
山口敏太郎が子供の頃に体験した話「咳で死んだおばあさん」
筆者は徳島の生まれである。生まれたのは二軒屋町だったが、その後両親とともに新興住宅地に移ることになった。だが祖母は、二軒屋に残り、祖母の家は自転車で行ける「実家」となった。 今でこそ、俳優の故大杉漣さんらがいたと言われ、それなりに下町として有名になっているが、筆者が少年時代のころは、あまり県内でも有名ではなかった。出身の筆者が言うのもなんだが、ひどく閑散した町であった。 その街で祖母は花屋を営んでいた。某寺の門前町として栄えていた通りで花屋を開いていたのだ。無論、お客は日々、墓参りの客である。 当時、父はサラリーマンとして、八万町という新興住宅地にマイホームを建て、高度経済成長の波に乗っていた。そんな中で、筆者は週末、祖母の花屋に泊まりに行った。 現代チックなマイホームと対照的な祖母の花屋は、筆者の脳髄を刺激した。なんとなく二軒屋に、レトロな日本風景を感じたのである。 ある時、筆者は風邪をひき、扁桃腺を腫らせた。 苦悶する筆者。とにかく、小さいころからやたらに喉がはれる子だったのだ。それを見た祖母は筆者を強引に連れ出した。 「しんどいけん、婆ちゃん、やめて、どこ行くん」 「黙ってついて行きい、咳で死んだおばあさんに頼みに行くけんな」 「せっ、咳で死んだばあさん」 筆者は気が動転した。確かに、咳で死んだおばあさんと祖母は言った。 死人にあいさつに行くとはどういうことだろう。口を開けて、あわあわ言っている筆者はいつの間にか小さな祠(ほこら)の前にいる。ちょうどオッパショ石の斜め前にある祠だ。 「この祠にお参りしとき、風邪から助けてくれるけん」 祖母が言った。 この祠は旅の途中、咳で死んだ人を埋めた祠で、咳に苦しむ人がお参りすると症状が改善するとされている。 「うん、分かったわ」 筆者は神妙に手を合わせた。すると、不思議なことに翌日、筆者の風邪は見事に回復した。 (咳で死んだおばあさんのおかげやな) この時、筆者は怪異と不思議を初めて実感した。(山口敏太郎)
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ミステリー 2019年03月10日 23時00分
正体は工作員か、それとも宇宙人か?アメリカに出没した怪人「マッドガッサー」
20世紀初頭のアメリカで恐れられた「怪人」がいる。高身長に黒尽くめの服装で麻酔薬を噴霧(ふんむ)する怪人・マッドガッサーである。 最初に事件が報告されたのは1930年代。この時は噴霧した犯人が逃げ去った現場に女物の靴が残されており、犯人は女性ではないかと言われた。 次に出現したのは1944年9月。イリノイ州のマトゥーンという小さな町をパニックに陥れた。アーリーン・カーニーという主婦は甘いにおいをベッドで嗅いだ。自分の娘が病気にでもかかったのかと思い、立ち上がりベッドから下りようとしたが、なぜか体の自由がきかなくなった。 家にいたアーリーンの姉妹がこの状況を証言しており、事実であることは確認されている。自宅に帰ってきたタクシー運転手の夫は、ベッドルームの窓の外で不審者を発見し、逃走するところを追跡したが、不審者は逃げ切ったと言われている。 この事件後、ナチス工作員が”一般大衆への毒ガス攻撃”を計画しているという情報も入ってパニックが広がっていき、恐れた市民たちは自警団を結成し警戒体制に入った。 10人のイリノイ州警官が動員され、FBIも2人のエージェントを派遣。犯人の割り出しにあたった。ファーリー・ルウェリンという名の男性が容疑者として浮上、彼の自宅の周辺で事件が起こっており、科学の知識がある上、同性愛者の仲間グループから追放されるなど、社会を恨む状況は多々あることが分かった。 しかし、この容疑者を管理下に置いた後も事件は置き続け、真犯人は別にいることが分かった。その後事件は迷宮入りし、真犯人はわからずじまいである。一説には、米軍の特殊部隊の実験であったとか、カルト教団のイニシエーション(儀式)であったという説も唱えられているが、真相はいまだ霧の中、いやガスの中である。(山口敏太郎)
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ミステリー 2019年03月10日 06時00分
相次ぐ目撃情報の真相は? 未確認生物“ネッシー“ブームは再び起こるか
伝説の未確認生物“ネッシー“が再び話題となっていると3月5日、イギリスのニュースサイト「MIRROR」が伝えた。 ネッシーとはイギリス、スコットランドのネス湖に生息するとされている、UMA(未確認生物)の草分け的存在。西暦565年に聖コルンバが“モンスター“に遭遇し、十字を切って撃退したとの伝記から語り継がれ、1933年に周辺インフラが整備されたことから目撃談が続出。有名な「外科医の写真」など写真や映像も出回り、世界的なブームになり、日本でもたびたびテレビ番組などで取り上げられた。 そんなネッシーの姿を2月23〜27の5日間で、2回もカメラが捕らえたと言うのだ。 23日はイギリス・マンチェスターから訪れた女性が、ネス湖近くのアーカート城周辺をドライブしていた時、水中に姿を消す前のL字型の黒い物体を撮ったとのこと。27日には、“ネッシーハンター“の男性がウェブカメラで暗い影を撮った。「その時ボートは湖を走っておらず、ネッシーを見つけたことはすぐに分かった」と語ったという。 これに対して、3月6日の同ニュースサイトで、2人の世界的に有名な“ネッシーハンター“、エイドリアン・シャインとスティーブ・フェルサムが、異論を唱えた。シャインはネス湖プロジェクトを率いていた人物で、フェルサムは25年も前からネッシーの調査をしている。そんな2人が主張しているのは“ネッシーはいない“との残念な結論のようだ。彼らは「目撃の多くはモンスター伝説が原因の幻想」とし、「大きく成長することができるチョウザメのような魚か、世界で2番目に大きな淡水魚のウェールズナマズ」と、その正体を推測している。 この記事についてネットでは「いないのは知ってるよ」、「存在しないモノの専門家って」、「世界で最も長く語られているフェイクニュース」などと冷ややか。Twitterでは「観光シーズンに間に合うようにネッシーが出てきてくれた」、「ネッシーとビッグフットが、UFOから降りてきたマイケル・ジャクソンとミーティングするかもな」などと茶化す投稿も見られた。 ネッシーは2018年には15回目撃されたとレポートされており、昨年のリサーチによると4100万ポンド(約60億円)もの経済効果をスコットランドにもたらしたと明らかにされた。昨年にはディスカバリーチャンネルが大規模な探査をしたというが、いくら真実が明らかになろうとも、ネッシーが実在するとの幻想はさまざまなファクターによって守られることであろう。
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ミステリー 2019年03月09日 23時00分
音楽家を呪いに導く「悪魔のヴァイオリン」伝説とその真相
前回、弾いた音楽家を不幸に陥れる楽器「悪魔のヴァイオリン」を紹介した。ヴァイオリン職人ガスパロ・デ・ベルトロッティが最高品質の胴やネックの製作を手がけ、装飾を作家のベンヴェヌート・チェリーニが担当した最高品質のヴァイオリンだったが、アルドブランディーニ枢機卿が恋心を抱き、少女に与えたところ狂ったように演奏して死亡。別の音楽家も死亡したため長らく封印されていたのだが、1646年ある音楽家が持ち出して演奏すると、精神病院に入院した後に自殺することとなった。 その後も「悪魔のヴァイオリン」の呪いはさまざまな音楽家に波及していく。 17世紀のヴァイオリン職人ヤーコブ・シュタイナーもこの「悪魔のヴァイオリン」に並々ならぬ興味を抱くが、原因不明の高熱に見舞われた。一命は取り留めるが、異教徒扱いされ投獄され、不幸な晩年を過ごすことになる。 その後、「悪魔のヴァイオリン」は博物館の所蔵品となるが、1809年にフランス兵によって略奪され、ウィーンのゲオルク・レスリー伯爵の愛器となる。だが、レスリー伯爵もまた精神が崩壊し、亡くなってしまう。 また、19世紀の名ヴァイオリニストとして有名だったフランツ・クレメントも、また呪いの連鎖を受けている。「悪魔のヴァイオリン」を手に入れたとたん、アルコール中毒となり、演奏中に脳出血で倒れ、失意の中で世を去っているのだ。 その後「悪魔のヴァイオリン」は、クレメントの弟子で女流ヴァイオリニストのベリンダ・マルギッターを経て、ベリンダの父親の知人・宮廷顧問のウルリヒ・エンツマイヤーが入手する。呪いの伝説を知っていたエンツマイヤーは、「悪魔のヴァイオリン」を鎮魂するために、ノルウェーの音楽家オーレ・ブルに託すことにした。彼は牧師でもあり、日々「悪魔のヴァイオリン」に祈りを捧げ、最期の演奏をした。自身の死後、ノルウェーのベルゲン博物館に寄贈している。 これが、「悪魔のヴァイオリン」伝説の概要だが、この伝説には矛盾する点がいくつかある。最初に「悪魔のヴァイオリン」を製作した2人だが、共同作業ができないほど生きた時代がずれている。ガスパロの生没年は1540〜1609年、一方チェリーニは1500〜1571年だった。 なんと年の差は40である。60代の名工チェリーニに、20代のガスパロが仕事を依頼できたのか。そもそも、アルドブランディーニが枢機卿であった期間は1585〜92年。これはチェリーニの死後であり、都市伝説の前提条件が崩れてしまう。二代目チェリーニだという説もあるが、どうにも苦しい。 どうやら「悪魔のヴァイオリン」は”あくま”で架空の都市伝説のようだ。(山口敏太郎)
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ミステリー 2019年03月03日 23時00分
悪魔が教えてくれた楽曲『悪魔のトリル』と音楽家を呪いに導く「悪魔のヴァイオリン」
みなさんは、『悪魔のトリル』という曲を知っているだろうか。イタリアの作曲家、ジュゼッペ・ タルティーニが作曲したト短調のヴァイオリンソナタ。彼の代表作でもある。 この曲が『悪魔のトリル』と呼ばれるようになったのは、イタリアのアッシジに居住していたころ、作曲に行き詰まっていたタルティーニが、夢の中に出てきた音楽の悪魔が足下で弾いた曲から着想を得たという伝説が残されているからである。一説には、魂を売って伝授されたとも言われる。この曲は演奏するには高度な技術が必要で、”悪魔の仕業”と演奏者がぼやく姿が脳裏に浮かぶ。 他にも、弾いた音楽家を不幸に陥れる「悪魔のヴァイオリン」という楽器も存在する。ヴァイオリン好きの少女に恋をしたアルドブランディーニ枢機卿(後のローマ教皇クレメンス8世)は、彼女のために豪華な装飾入りの最高級のヴァイオリンを作ってほしいと考えた。結局、イタリア・ガルダ湖畔にあるサロという町に住むヴァイオリン職人ガスパロ・ディ・ベルトロッティに依頼した。 この仕事を引き受けたガスパロは、最高品質で胴やネックを製作。その装飾を作家ベンヴェヌート・チェリーニに依頼した。そして完成したのが「悪魔のヴァイオリン」こと「ベンヴェヌートのヴァイオリン」である。 このヴァイオリンの完成を待ちかねていた枢機卿は、さっそく恋心を抱いていた少女に与えた。2人の天才の思いが込められていたからだろうか。その音は狂ったように響き、旋律には異常なテンションが乗っていた。演奏をしていた少女はまるで何かに取りつかれたように「悪魔のヴァイオリン」を弾き、最期には絶命してしまった。 ショックを受けた枢機卿はヴァイオリンを封印するが、彼女の死後20年目に供養の意味を込め、ある音楽家に演奏を依頼した。だが、この音楽家も演奏中に何かに憑依され、高熱を出して倒れてしまった。 枢機卿の死後長く封印され、「悪魔のヴァイオリン」という怪奇伝説が生まれるのだが、1646年にある音楽家によって演奏されてしまう。もちろん、この音楽家にも呪いが襲いかかり、演奏後精神が崩壊。入院するが首つり自殺を遂げてしまうのだ。 その後も「悪魔のヴァイオリン」の呪いはさまざまな音楽家へ波及していくのだが、その詳細は次回に譲ろう。(山口敏太郎)
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ミステリー 2019年03月02日 23時00分
臨死体験で未来を垣間見た!?衝撃の体験を語る人々
彗星探索家(コメット・ハンター)の木内鶴彦氏は、映画「ディープインパクト」(1998年)のモチーフとなった巨大なスウィフト・タットル彗星を92年に再発見したことで知られているが、彼は2度の臨死体験において、地球の未来を幻視している。 彼は22歳のときに、上腸間膜動脈性十二指腸閉塞という病気で「死亡」し、30分後に蘇生。医師がカルテに死亡と書いた後、生き返る稀有な経験をした。この際、過去から未来への時間の流れや、地球から宇宙に向かう空間を漂い、地球の絶望的な将来を見てきたというのだ。 1度だけならまだしも、2009年にも同様の体験をしたという。皆既日食の観測のため中国に渡航したとき、胃から大量出血をしてしまい再び臨死状態になってしまった。このときも地球の未来像を幻視したのだが、以前目に見た絶望的な未来とは違って、30%程度は希望が持てる未来に変わっていたそうだ。 これらの情報から判断すると、未来は日々変動している可能性が高いし、臨死体験の途中は時間や空間さえも飛び越えることができるようだ。 この木内氏の証言と似た臨死体験をした人物は他にもいる。NPO法人ネットワーク『地球村』代表の高木善之氏は、1981年にバイクの事故に遭い、臨死体験をしている。興味深いことにこのとき、地球の未来を幻視してしまったという。ソ連が10年後に崩壊し、アメリカが20年後に崩壊、地球そのものが40年後に崩壊するという「ショッキング映像」を見たというが、幸いにも的中したのはソ連崩壊のみ。アメリカや地球の崩壊はどうにか回避できたようだ。このように、臨死体験中に未来を見ており、その未来が修正されているという体験は存在するのだ。 彼らの見たものは何だったのか。近年「未来人」を自称する人々の証言がネット上で注目されているが、彼らの語る「未来」も現実と比べると、少しずつ違っていることも多い。もしかすると、彼らが臨死体験の時に見た「未来」は数ある未来のうちの可能性の一つ、平行世界での光景だったのではないだろうか。(山口敏太郎)
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ミステリー 2019年02月24日 23時00分
新型ウイルスだったのか?謎の流行病・赤目病
現代、医療技術は急速に発達しているが、医療が飛躍的に進歩したのは遅く見積もっても19世紀から20世紀初頭のこと。昔は病気にかかることはすなわち「死」を意味していた。 もちろん古代の人間も病をただ恐れていたのではなく、さまざまな経験や調査の積み重ねで薬や治療法を開発していったのだが、やはり現代の知識から見ると誤った方法や、民間療法にとどまることが大半であった。とはいえ、それでも回復することができれば文句はなかったわけだが。 当時流行していた病気や疾患は、当時の文献や遺体などを調べればある程度予想することができる。だが、中には現在でも正体不明の病気が流行していたことを物語る資料も存在している。 応永14(1407)年、足利義満が小松天皇におうかがいを立て、医王院という医療施設を造った。この医王院は、当時下総国で流行していた奇病「赤目病」を治療し、鎮めるべく建てられたものだったという。この赤目病の症状は、目が赤くなり、目ヤニが多く出て、目の下のクマがひどくなりやがて最後は死に至るという奇病であった。この病気の歴史は長く、昭和20年代に患者が亡くなったのを最後に病気は根絶に至ったという。つまり、つい最近まで「死病」に近かった病気だったのだ。なお、同院では昭和20年代まで名水と目薬を参拝者に分けていたという。しかし、薬機法の関係もあって今は販売していない。 この病気に関して、現在では目の充血を伴う細菌、もしくはウィルス性の疾患であった可能性が高いと見られている。 赤目病に関して、筆者は中国で流行している、エイズに似た症状を見せる病気「マイコプラズマ・ファーメンタンス」に近いものだったのではないかとみている。マイコプラズマ・ファーメンタンスという細菌は唾液で感染すると言われており、罹患した当初は尿道炎に似た症状が出るが、そのうち体全体が気だるくなり、関節炎を起こす。 目が充血する以外は外見上明確な病状が出ることはなく、場合によっては病院でも診断できない場合があるという。幸いこの病気は、ガースニコルソン博士により治療方法が確立されているため、もう不治の病ではない。(山口敏太郎)
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ミステリー 2019年02月23日 23時00分
怨霊の仕業か、妻による暗殺か 謎の急死を遂げた源頼朝
平家を討ち滅ぼし武家政権を打ち立て、鎌倉幕府を開いた源頼朝だったが、その死後源氏の政権は滅ぼされ、その実権は北条氏に奪われてしまう。 その頼朝の血脈が「廃嫡」されるまでの過程がかなり悲惨だった。父・頼朝の跡を継いで二代将軍になった頼家だったが、北条氏と比企氏の争いの巻き添えを食らって修善寺に幽閉され、北条氏によって暗殺されてしまう。その後を継いだ実朝も甥に討たれてしまい、頼朝の直系は途絶えてしまう。これ以降は宮家から迎えた傀儡(かいらい)の将軍が鎌倉幕府を運営していく。現在で言うと創業家を追い出した企業の役員たちが、他の企業や官庁からお飾りの社長を迎えながら、会社を経営していくようなものだ。 これら嫡流廃絶の流れの原因は頼朝の突然の死による。1198(建久9)年12月、頼朝は相模川の橋供養に列席した帰路に落馬し、翌年の1月に亡くなったとされている。だが頼朝の死に関して、不可解な点は非常に多いのだ。 鎌倉幕府の正史に『吾妻鏡』という文書がある。同書は頼朝から第6代将軍・宗尊親王までの時代に起こった出来事を記録した、公文書に近いものである。にもかかわらず頼朝の死は、それから13年も経ってから記録されている。その上、頼朝の死後3年間の記録が記述されていない。確かに武士でありながら落馬し、それが原因で死んだというのはあまり褒められたものではない。だが、初代将軍である頼朝の死に13年間も触れないのは不自然ではないか。 実は死因は他にあるのではないかという説がある。脳卒中や糖尿病という説も唱えられているが、単なる病気であったならば隠すことはない。他にも頼朝の浮気に激怒した北条政子が殺害したとか、浮気相手の屋敷で討ち取られたという説もあるが、北条政子が頼朝を愛していたのは事実のようであるし、浮気相手の屋敷に忍んでいくときも側近たちはいたはずである。そうやすやすと討ち取られはしないだろう。 橋供養の際、義経や安徳天皇ら頼朝が殺害してきた人々の亡霊が現れ、驚いた馬が暴走し落馬して死んだという説もある。当時の人々は怨霊を真剣に恐れていたことから考えれば、13年間もその死に触れなかった理由も理解できる。筆者としてはこの説を採用したいところだが、いまいちしっくりこない。 では、なぜ頼朝は死んだのであろうか。筆者が気になるのは、朝廷内で起きていた派閥争いである。親幕派と反幕派が内部抗争を繰り返し、土御門通親が率いる反幕派が勝利しているという事実だ。この連中が怪しくはないか。 土御門家と言えばあの陰陽師・安倍晴明の末裔である。頼朝の不審な事故死と怨霊の噂、そして朝廷で鎌倉幕府に憎悪を燃やす晴明の子孫。「あの安部晴明の子孫だからは何をするか分からない」「平家や義経の怨霊が鎌倉にたたっているのだ」と迷信深い当時の武士たちが震え上がった可能性はある。 ひょっとすると頼朝の死は本当に事故や病気だったのかもしれないし、実際の朝廷勢力や平家の残党による暗殺だった可能性もある。だが、怨霊の噂や土御門の権威を恐れた幕府の幹部たちが、宮将軍を迎えることで朝廷の公家勢力と妥協しようとしたのではないだろうか。(山口敏太郎)
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ミステリー 2019年02月17日 23時00分
平安時代のクローン技術?西行法師の秘術
遺伝子工学は発達している。クローン人間を”臓器の予備パーツ”として作れば、臓器移植問題は解決するのでは…そんな議論がたびたび交わされている。確かに本人のクローンであれば内臓もうまく適応するだろうし、臓器提供者を待つ時間的なロスも解消する。だが、もし将来クローン人間が誕生した場合、 その人権はどうなるのだろうか。たとえクローンであったとしても、もはや本体の人物とは別途の存在だ。 『撰集抄』には、かの名僧・西行が山中で修行をやっている時に人造人間ができたという逸話が残されている。ちなみにこの西行、なかなかオカルトチックな人物であり、上田秋成の名著『雨月物語』には、四国にある白峰宮を訪問した西行が、崇徳上皇の怨霊を慰霊したというエピソードが紹介されている。 では西行は、どういう経過、手法で人造人間を完成させたのであろうか。高野山の山中で西行が友人の西住上人とともに修行していたときのこと。所用で西住は山を下りてしまった。孤独に悩まされた西行は、鬼が人骨を集めて人間を作る作法を聞いていた。これをまねて人造人間を作ってみることにしたという。 西行は誰もいない場所で、死人の骨を集め、頭蓋骨から足先までを順番に並べ、砒霜(ひそう)という秘薬を骨にまんべんなく塗り、骨と骨とを藤でつなぎ合わせて水洗いした。それから14日間放置し、沈と香を焚いた。 だが、出来上がった人間は見てくれも悪く、人間のような声も出ない。下手な笛の音のような奇妙な音しか発声できなかった。一応人間の形をしており壊すわけにもいかず、結局高野山の奥地に連れていき、そのまま捨ててしまった。 なぜうまくいかなったのか納得がいかない西行は、人造人間をうまく作ることができる人物として噂のあった伏見前中納言師仲卿を訪問し、そのコツを尋ねた。その回答は、反魂術を行うには修行不足であることと、沈と香を焚くのではなく、沈と乳を焚いた方がいいというものであった。伏見前中納言師仲卿は、これまでに何人もの人造人間を作っており、中には朝廷で出世している者もいるが、その氏名を明かすと「作った人間も、作られた人間も消滅してしまうので教えられない」と言われたそうだ。 もちろんこれは史実ではなく、根拠となる『撰集抄』も作者不詳の説話集にすぎない。しかし、このようなSF的な説話が古くから語り継がれてきたという事実は、大変興味深い。(山口敏太郎)
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ミステリー 2019年02月16日 23時00分
徳川家康は宇宙人と会っていた?
牧墨僊(まき・ぼくせん)によって記された「一宵話」の二巻に奇妙な話がある。あの江戸幕府を開いた徳川家康が、駿府城で小型エイリアンと接触していたという記録が残されているのだ。 1609(慶長14)年4月4日の朝、駿府城の庭に異様な姿をした「ヒトガタ」が立っていた。手足はあるものの、指はなく、ひたすら天を指し示している。不気味な容姿は「肉人」とでも表現したらいいのだろうか。家臣たちは大騒ぎになり、「なんだ!あれは、妖怪か、人か」「こやつは、どこぞの間者(かんじゃ)か」と口々に騒いだが、どうにもならない。騒動が大きくなったので、大御所である家康の耳に入れた。 すると、家康は「どこか、人目のつかぬところに追い払ってしまえ」と指示した。結局、家臣たちが総出で追いかけ回し、城から遠い小山の方まで追い立てて捨ててきたという。 後日、この話を聞いた物知りの人物が嘆きながら言った。 「なんとも惜しいことをしたものだ。大御所さまの周囲にいた家臣たちが『学』がない者ばかりだったため、まれに見る仙薬を入手できないようになってしまった。この『肉人』は、『白沢図』に載っている『封(ほう)』という存在だ。この肉を食べると滋養強壮になり、武勇も増したのに、まったくもったいない」 この話、一見よくある妖怪話に見えるのだが、エイリアンが当時の政権の実力である徳川家康にコンタクトを求めてきたという可能性はないだろうか。現代でも、ロシアやアメリカの大統領に対し、エイリアンがコンタクトをとっていると噂されている。ならば、江戸初期の日本に飛来したエイリアンが家康と接触してもなんら不思議はない。 ちなみにこの「封」の姿を描いた絵は残念ながら存在していないが、その記述から鳥山石燕が描いた「ぬつへつほふ(ぬっぺっぽう)」が似ているのではないかということで、よく引き合いに出されている。よってここでも紹介させていただくが、可能であれば姿を描いた絵を見てみたいものだ。(山口敏太郎)
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