中世風のノイシュヴァンシュタイン城は、19世紀に幼少期から騎士道に強く憧れていた、バイエルン王ルートヴィヒ2世によって建築された。普墺戦争の損害賠償を抱えるバイエルン政府は、その後も次々と城の建築を始めるルートヴィヒ2世に危機感を募らせ、精神病としてベルク城に軟禁、翌日主治医と共に、散歩中のシュタルンベルク湖で水死体となって発見。詳細は謎のままである。そして、いつの頃からかノイシュヴァンシュタイン城に、ルートヴィヒ2世の幽霊が出ると噂されるようになった。
ある日、ノイシュヴァンシュタイン城を見学していたドイツの13歳の少女エリザベータは、母親とはぐれてしまった。母親が探しても見つからず、警察に捜索依頼したところ、直線距離でも60km離れたベルグ城で発見された。何故、エリザベータは一人でそんな遠くまで行ったのか。
それは、自分の意志ではなかったという。ルートヴィヒ2世の寝室に入った時、背後にルートヴィヒ2世が立っていた。驚くエリザベータだったが、ルートヴィヒ2世に誘われるまま別室でピアノを聴いていた。すると突然乱入した兵隊に捕えられたルートヴィヒ2世は、湖に連れて行かれ殺された。しかし、殺されたはずのルートヴィヒ2世は起き上がると、エリザベータに帰るよう促した。そしてエリザベータは意識を失い、気付くとベルグ城の前に立っていたという。
死者と出会った少女は、時を越え空間をも超えたのだろうか。
(七海かりん 山口敏太郎事務所)