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『かまいたちの机上の空論城』(関西テレビ)の企画をきっかけに、SNSで大バズりした漢字ネタが一冊の本に。「婚約」の日の部分が指輪ケースになっていたり、「捨」の口部分が吹き出しになって「捨てゼリフ」に変身したり……本書ではそんな遊び心あふれるオリジナル創作漢字が100個以上掲載されている。
今回、書籍出版を記念して、中村にインタビューを実施。本書のことはもちろん、かまいたちの印象や先輩ピン芸人・おいでやす小田のことなど、ざっくばらんに語ってもらった。
――初のネタ本が発売です。今の心境を聞かせてください。
ピン芸人になってから、ずっとネタ本を出したかったので、やっと夢がかなったなって思います。お話がきたときは、芸人になって一番うれしい瞬間でした。
――本書発売の経緯を教えてください。
昨年6月末に『かまいたちの机上の空論城』のチャレンジ企画『誰でも1日100ツイートすればどれか1つはバズる!…ハズ!』で、この創作漢字ネタを自分のTwitterに投稿しました。当時、めちゃくちゃバズりましたし、この企画が放送された後は、フォロワーも増えたので、形になるまでやってみよう、と思っていたところ、早い段階でお話をいただいたのでうれしかったです。
ーー創作漢字はどのように作られるんですか?
常用漢字一覧をGoogleで検索したらブアーッと出てくるので、それを見ながら“これはこうしたらええんか”と字を見ながら作ったり、普段のネタ帳とは別に創作漢字用のネタ帳も作ったので、何個も書いてみたりして作ることが多いです。2021年は創作漢字と向き合おうと思っていたので、ネタもほとんど作ってないんですよ(笑)。形になってよかったです。
ーーネタの作り方と似ている部分がありそうですがいかがですか?
この漢字ネタは昔、フリップネタでやったことがあったんですけど、ドンとウケる感じではなく、納得されてしまうというか……。“笑いにならないからやめておこう”と置いといたものをTwitterにあげたらバズったんで、SNS向けやったんやな、って思いましたね。
ーー書籍では、創作漢字の下に正しい漢字も記載されているので、お子さんの勉強にもいいかもしれませんね。
老若男女楽しんでいただけるものにしたいなって思っていたので、悪口とか悲しい言葉が入らないようにしていました。学校の図書室にも置いてほしいし、ヴィレッジヴァンガードにも置いてほしいです。
ーー(笑)。『空論城』番組MCのかまいたち(濱家隆一、山内健司)さんの印象は?
全国的に知られるようになったのはここ数年かもしれないですけど、関西では結成1、2年目でテレビに出ていましたし、若手の劇場でもトップにいたんですよ。その頃、僕は劇場のオーディション組で、関西のテレビにも出てなかった。1年後輩でしたけど、めちゃくちゃ売れているヤツら、憧れの存在みたいな感じでした(笑)。今回、(かまいたちに)帯も頼んでいるんですけど、創作漢字もすごく面白がってくれたのでよかったです。
ーーいい関係性なんですね。
“俺売れてないしバカにされてる?”っていう被害妄想で勝手にビビってはいるんですけど、すごく優しく接してくれます。いつも気さくに喋ってくれますし、昔から面白いと言ってくれていたんで、ありがたいですね。
ーー中村さんといえば、『R-1ぐらんぷり』で6度のファイナリストとなりました。芸人人生を大きく変えた大会では?
そうですね。当時は“年明けに予選があるから夏までにはネタを作らないといけないな”とか、毎月単独ライブやって年間100本ネタを作って……っていう『R-1』のために年間スケジュールを立てて、すべての力を注ぎ込んでいました。今回、それがなくなったことで(2021年大会より、出場資格が芸歴10年以内に変更)、どうしようかと思っていたんですけど、時間が空いたので、丸々創作漢字に注ぐことができました。
ーーそんな大会で思い出に残っている年は?
決勝にいけた2011、2012、2020年ですかね。2011年は初めて決勝にいった年なんですが、正直いけると思ってなかったんですよ。準決勝ではウケたけど、売れてないし、劇場ではオーディション組やし、だからこそいけると思っていなくて……めちゃくちゃ驚きました。
2012年は1回決勝にいったプレッシャーからネタができなかったですし、つらすぎて涙が止まらなくなるくらい追い込まれていました。1カ月半くらいバイトを休んで、ひたすらネタを毎日考えていたのもあって、根性がつきましたね。この年が一番しんどかったかもしれないです。
2020年は、それまでずっと決勝にいけてなくて(2016年以降準決勝止まり)“今年こそは決勝にいくぞ”という執念でネタをブラッシュアップしていました。フリップネタと同時にコントも作っていたんですけど、コントで決勝に出たいと思っていたので、それが披露できてめっちゃうれしかったです。
ーー先輩・後輩かかわらず、中村さん以外にも面白いピン芸人さんがたくさんおられます。ライバルだと思う芸人さんはいらっしゃいますか?
おいでやす小田さんは、昔からずっと一緒にやってきた先輩で、ライバルというのはおこがましいですけど、気になる存在ではあります。
ーー小田さんとのやりとりで印象的だったことを教えてください。
小田さんは昔からブレてなくてやっていることも変わらないんですよ。自分がこうやったら面白いというのを明確に分かっていて、それをやり続けている人でした。
僕が20代のとき「ピン芸人は30歳を超えな面白くならん」って言われたんですけど、“なんでそんなこと言うねん”って思っていました(笑)。ただ、30代になってみて“確かにそやな”と思いましたね。味が出るというか、ネタに人生が見えるというか、“後戻りできひん覚悟”みたいなものが出てくるんでしょうね。
ーー今回書籍を出されましたが、今後の野望は?
この本を売って、2冊目、3冊目を出したいですね。今までフリップネタをたくさん作ってきたので、それに関連するネタ本、あとは文章系の本も出したいです。
芸人としては、NGK(なんばグランド花月)などの大きな会場を単独ライブで満席にしてみたい。あと、学校に行くのが楽しくなかったとき『ナインティナインのオールナイトニッポン』(ニッポン放送)とか、ラジオに救われていたので、深夜ラジオのパーソナリティもやってみたいです。
――最後に本書のおすすめポイントをお願いします。
いろんな漢字ネタもそうですけど、それぞれの創作漢字に自分なりの一口エッセイ的な解説も入れたので、その解説部分も楽しんでいただけたらなって思います。
取材・文:浜瀬将樹
『おもしろ漢字辞典 こんな漢じでどうですか?』
著者:ヒューマン中村
定価:1,320円(本体1,200円+税)
発売日:2022年03月31日
出版社:KADOKAWA