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続・フランシーヌのおバカさん?

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画像はイメージです。

 東日本大震災と原発事故をきっかけに、イシキタカイ市民たちが街頭デモを繰り広げ、また安保関連法案反対運動でも同様の政治活動を展開した。その中で、とある昭和歌謡がにわかに注目を浴びる。それは、郷伍郎氏が作曲した「フランシーヌの場合」で、いわゆる左翼方面以外ではすっかり忘れ去られていた懐メロが、政治の季節とともに蘇ったのであった。

 この曲はベトナム戦争やナイジェリア内戦に心を痛めた女性が、パリで抗議の焼身自殺を決行したことを歌っており、タイトルの「フランシーヌ」は女性の名前とされる。そのため、発表直後から反戦平和活動に熱を上げる若者たちの心を捉え、彼らが老境の域に達した現在でもなお、界隈で愛唱されつづけていたという。

 ところが、曲に歌われたフランシーヌについてネットで検索すると、カタカナはもちろんアルファベットでも日本語の情報ばかりが表示され、それもすべて同じ「ひとつの小さな新聞記事」へ行き着くと言うのだ!

 そればかりか、記事をもとに書かれたブログエントリーなどは事実関係とは無縁の感傷的な思い込みが大半で、最近流行りの表現を用いるなら「感動ポルノ」として焼身自殺を消費するものばかりだった。そのような状態だったため、ネットでは「フランシーヌ非実在説」や「飛ばし記事説」までささやかれた。とはいえ、通信社の配信記事だったこともあり、図書館などで当時の新聞を丁寧に探せば、事件に関する情報が掘り起こされる可能性は高かった。そして、実際に記事は存在したのである。

 まず、フランスの新聞や雑誌のアーカイブで記事のドキュメントファイルが掘り起こされ、アメリカの地方紙にも同様の記事が掲載されていたことが判明した。

 では、なぜネット検索では日本語情報ばかりが表示されたのだろう?

 まず、フランスやアメリカの記事はファイル形式の問題があり、ネット検索で洗い出しにくかったという事情があった。さらに、焼身自殺を遂げた女性は精神を病んでおり、自殺の原因も精神病とされたため、遺族の希望により最初の記事以外は報じられなかったとされている。

 そのため、歌謡曲となった日本でのみ「事実とはかけ離れた抗議の焼身自殺イメージ」が語り継がれ、ある種の検索汚染が生じたと言うものらしい。

 もし遺族の希望が真実であるならば、当人のあずかり知らぬ間に政治的イメージを押し付けられ、さらに感動ポルノとして消費されているというわけだ。それを念頭に置くと、曲からは人間社会の虚しさや愚かさしか感じられないだろう。

(了)

*画像はフランシーヌの場合[EPレコード 7inch]

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