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日本人メジャーリーガーはどうなる? 「建山 義紀=レンジャース」 スライダーのキレがダルビッシュの落札金を変える?

 テキサスレンジャースとの契約は、「実質1年」。翌年以降の2年間は、契約を延長するかどうか、球団が行使権を持つオプションとなった。手っ取り早く言えば、成績を見て、2年目の2012年、3年目の2013年シーズンに建山との契約を延長するかどうかを球団が決めるというものだ。年俸は80万ドル(約6800万円)。決して悪い契約ではないと思う。しかし、契約延長の行使権を2年目と3年目の両方に持ったのは、得意ケースと言っていい。
 特異な契約となった理由は、メジャーがリリーフタイプの日本人投手に対し、「半信半疑」だからである。したがって、建山が成功するかどうかは米挑戦を考えている日本の後輩たちに「多大な影響」を与えるだろう。

 そもそも、メジャーがリリーフタイプの日本人投手の獲得に二の足を踏むようになったのは、2008年オフ。07年、1人の日本人リリーバーがムーブメントを起こした。岡島秀樹である。注目は同期入団の松坂大輔に集まったが、「ワールドシリーズ制覇の影の立役者」と言われるほどの“大成功”をおさめた。メジャーからすれば、日本時代の岡島は無名に近かった。巨人、日本ハムで過ごした12年間の通算成績は34勝32敗41セーブ、防御率3.36(439試合)。日本のリリーフ投手の評価が高まった。その特需を受けて08年シーズンにアメリカに渡ったのが、小林雅英、薮田安彦、福盛和男である。しかし、彼らは失敗した…。日本のリリーフ投手に対する猜疑心が、08年オフ、三井浩二(元西武)のポスティング・システムに影響した。三井は同年オフに2度も制度行使したが、2度とも「落札球団ゼロ」の屈辱に見舞われた。
 以後、「リリーフタイプの日本人投手の調査に慎重に…」という米スカウトの評価は変わっていない。2010年オフ、小林宏之、土肥義弘が米球界側との交渉に失敗したのもその影響だという。

 建山義紀は昨季、自己最高の成績を残している。58試合に救援登板し、1勝2敗4セーブ25ホールド、防御率1.80。12年間、堅実にコツコツと実績を積み重ねてきた好投手であり、日本ハムのブルペンを支えてきた功労者でもある。しかし、本人には失礼かもしれないが、米球界では“無名”だ。その建山が「日本人リリーバーへの逆風」をもろともせず、FA権を行使してからさほど時間の経たない時期にメジャー契約を勝ち取ったのは、「情報収集の勝利」だろう。まず、レンジャースは“逆輸入投手”、コルビー・ルイス(元広島)が活躍したことになり、日本球界に対する興味をさらに強めていた。ルイスは広島移籍前、メジャー3球団を渡り歩いたが、その才能を開花できないでいた。『制球難の弱点』を広島で克服し、レンジャースに復帰した昨季、いきなり12勝(13敗)の好成績を挙げた。また、長く活躍できなかったが、日本人リリーバー・大塚晶則が『臨時クローザー』として大活躍したこともあった。
 また、建山サイドもレンジャースを第一希望に考えていたのではないだろうか。現レンジャースは『投手力のチーム』でもある。先発スタッフはルイス以外にも、C・J・ウィリアムス(15勝)、ハンター(13勝)、フェルドマン(7勝)らがいて、救援スタッフも人材豊富なうえに、『リリーフ防御率』でもリーグ2位という好成績を残している。クローザーには40セーブで新人王のフェリースがいるが、「2年目のジンクスが心配」とのことで、ジョン・ダニエルズGMは「ブルペンスタッフのさらなる強化」をオフのテーマに掲げていた。
 レンジャースは建山の他に、前レッズのアーサー・ローズも獲得した。ローズは昨季、メジャー最多タイの33試合連続無失点登板をやってのけたが、今季42歳になる。ロン・ワシントン監督は継投策に長けた指揮官でもあり、「ブルペンスタッフの数が多ければ多いほどいい」と考えている。リリーバーの人数が多いチームでも、フェリース、ローズともタイプの異なる『右サイドハンドの建山』にも十分な活躍の場が与えられるわけだ。

 その建山が活躍できるかどうか−−。米国人メディアの1人にそう質問したところ、「可能性は高い」と言う。建山は「スライダー・ピッチャー」と紹介されたそうだ。「スライダー」は、建山の今季を占う重要なポイントの1つだ。一般論として、メジャーリーグのストライク・ゾーンは外角を広い。つまり、日本時代は「ボール」と判定された外角のスライダーが「ストライク」になる。スライダーがキレれば、建山は「日本時代よりもストライク・ゾーンが広い」と感じるだろう。そのストライク・ゾーンの違いによって、メジャーでブレイクしたのが斎藤隆でもある。建山は『第2の斎藤』になれるというわけだ。
 また、建山の投球フォームは変則だ。オーバーハンドのような振りかぶり方、体重移動をし、その途中からサイドに変わっていく。この変則モーションも有利にはたらくのではないだろうか。ただ、建山のストレートは米国に行けば、「普通以下」だ。ワシントン監督は、7人のリリーバー体制で開幕戦に臨もうとしている。1試合で何人ものリリーバーをつぎ込む采配も見せるが、ローズ、オガンドなど人材が豊富なだけに、開幕枠からこぼれ、メジャー・デビューが遅れる可能性もある。

 こうしたいくつかの不安要素もあるが、リリーバー・建山が成功すれば、救援タイプの日本人投手の評価が確実に変わる。古巣・日本ハムファイターズにはメジャー30球団が熱い視線を送るダルビッシュもいる。建山がダルビッシュの落札金をさらに高めるかもしれない。
 日本人リリーバーの未来を変える可能性があるというのに、「お天気お姉さん」との浮名を流すとは…。そういう精神面での図太さを『レンジャース・ボールパーク・イン・アーリントン』のマウンドでも発揮してもらいたいものだ。(スポーツライター・飯山満)

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