三笠とは、日露戦争の日本海海戦で、連合艦隊の「旗艦」であった戦艦だ。
この戦艦には、連合艦隊の司令長官である東郷平八郎も乗船し、日本海軍の祖である坂本龍馬の写真を「守護神」として飾っていた非常に歴史的価値のある戦艦なのだ。この三笠と龍馬にまつわる不思議な話が残されている。
日露戦争当時、昭憲皇太后の枕元に龍馬の幽霊が立ったという話がある。これはおりしも、日露戦争のクライマックスで、日本の連合艦隊と、世界最強と言われたロシアのバルチック艦隊が激突する直前のことだった。明治37(1904)年2月6日、昭憲皇太后の夢枕に坂本龍馬と名乗る男が白装束で立ち、日本海軍の勝利を予言したという事件があった。
とはいえ、皇后陛下と龍馬に面識があるわけもない。そこで臣下の者が、坂本龍馬の写真を見せると「まさしくこの人が夢に出てきた人物である」と言明したという(なお、このとき確認のために使用された写真は、今も京都に現存する)。
日本の海軍の祖である龍馬が、日本の国難を見かねて出現したのであろうか。そして、龍馬の予言通り、日本艦隊は奇跡的な勝利を収める。海援隊が幕府軍と闘ったときのように、龍馬の魂が日本海軍に力を与えたのかもしれない。
また、この横須賀の地は龍馬の妻・おりょうの終焉の地でもある。再婚したもののいつまでも龍馬のことを思い、横須賀では酒に溺れた晩年のおりょうは、さみしくこの土地で死んだ。暗殺により引き裂かれてしまったふたりだが、図らずも、龍馬を奉った戦艦・三笠は、日露戦争で旗艦という大役を果たした後に横須賀に戻った。死後、2人は横須賀の地で再会したのだ。なんとも不思議でロマンチックな話である。龍馬ファンにはぜひ横須賀を訪れてもらいたい。
現在、公園にある戦艦の大砲は、今でもロシアの方角を向いている。今でも、三笠や龍馬の御霊は、諸外国から日本を守っているのであろうか。
そんな戦艦の眠る地、三笠公園には強大なパワーがみなぎっている。そのパワーを授かりに一度、戦艦三笠を訪れてみてはどうだろうか。日本の領海を侵食する外国を圧倒するのは、三笠の主砲を使った呪いかもしれない。
これは余談だが、龍馬が夢枕に立った話は戦意高揚を図るために山県有朋が作ったという説と、薩摩・長州の派閥に比べ、出世レースで負けていた土佐派閥による「プロパガンダ(宣伝)」であるという説もある。
(山口敏太郎)