二人の若い男性が写っている。一人は顔の黒いチェック柄のシャツを着た男性、もうひとりはやや小太りな背の小さい男性である。仲は非常に良いようで肩を組み、笑顔でポーズをしているなんとも微笑ましい写真である。しかし、所有者いわくこの写真はもうひとり彼らの知らない謎の人物が写ってしまっているというのだ。
真ん中部分をよくご覧いただきたい。彼らの肩部分に謎の肌色の物体が覗いている。一部が空洞になっていることからこの写真に写っている物体は人間の鼻もしくは指のようにも見える。ふたりの友人でもある所有者はこの鼻だけの人物には見覚えがないという。
いったいこの写真に写ったものはなんなのだろうか。
所有者によるとこの写真は高校の合宿の際に撮影されたものだという。時期は不明だが、所有者の高校時代となると10年ほど前になる。場所は恐らくではあるが所有者が高校時代によく学校行事で使用していた神奈川県の某施設の宿舎だったと記憶しているという。
この施設は児童厚生施設として近年でも神奈川県近隣の学校でよく使用されているのだが、児童厚生施設になる前は旧日本軍の弾薬倉庫だった過去があり、近くには心霊スポットとして有名な防空壕がある。
現在は整備されて戦時中の設備は残ってはいないが、使われた弾薬庫の跡は数多く残っており今尚、戦争の面影を感じられる場所であるという。
所有者の通っていた学校ではこの施設で年に数回、マラソン大会やキャンプ合宿が行われており引率の先生が戦争と平和を訴える授業と先生の体験したちょっとした怪談話を披露するのが恒例だったという。
実際、この場所は保管された爆弾が誤爆し死傷者を出すという痛ましい事故も発生し、慰霊碑なども立っているため、所有者は「泊まり込むのは非常に怖かった」と語っている。
恐らくではあるが、この花だけの人物は誤爆事故で亡くなった人物の霊であり、同年齢の学生の楽しそうな雰囲気に釣られてやってきたのではないかと思われる。
写真に写っている男性ふたりは無事に学校を卒業し、この施設で学んだ楽しい思い出とともに立派に社会人として働いている。
文:穂積昭雪(山口敏太郎事務所)