これまで、ジブリ作品には『となりのトトロ』で、父親と小学生の娘が一緒にお風呂に入るシーンが「欧米ではアウト」といったツッコミが入っていたが、名作と名高い1995年公開の『耳をすませば』にも、同様の流れが生じてしまった。
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一つが自転車の二人乗りのシーンである。主人公の月島雫を乗せて天沢聖司が坂道を駆け上がるシーンは、作品のハイライトの一つである。だが、ネット上では「コンプラ的にアウト」「道交法違反では」といったツッコミが生じてしまった。
自転車の二人乗りに関しては、各都道府県の公安委員会規則に基づき、おおむね6歳未満の子どもを乗せる場合を除き、原則として禁止されている。子どもを乗せる場合は専用の座席を用意し、ヘルメット着用が義務付けられている。さらに運転者が16歳以上である必要がある。
この規則に基づけば、中学生が運転している『耳をすませば』の自転車二人乗りは法的にはアウトだろうが、ネット上では「耳をすませばの今の自転車の逆走シーン、コンプラ違反でこの先地上波放送禁止とかになりそうで怖い。今の風潮だとマジであり得る」「『耳をすませば』観て『自転車の二人乗りは違法』とかいう大人にはなりたくない」といった声が聞かれた。
もう一つが「個人情報」に関するツッコミである。物語では、図書館の貸出カードの履歴から雫と聖司がお互いの名前を意識して行く場面がある。図書館の貸出情報の秘密は守られなければならないと「図書館の自由に関する宣言」(1954年採択、1979年改訂)で定められており、公開当時から問題となっていたようだ。さらに映画公開後の2005年には、プライバシー保護を重要な目的とする個人情報保護法も施行されている。最近のコンプライアンス意識の高まりで、蒸し返されるようにツッコミが生じていると言える。
こちらにも「あの図書カードを通じての出会いが学生らしくて良いなっていうポイントやのに、そこにいちいち『法律では〜』とか『個人情報が〜』とか言うのは野暮やなあって思うわ」「図書カード懐かしすぎるんだが当時の個人情報概念やばいよな」といった声が聞かれた。
過去作品の表現の取扱に関して、慎重にならざるを得ない社会になっているのは確かかもしれない。