1971年8月23日朝、スペインのアンダルシア州ベルメス・デ・ラ・モラレダに暮らすペレイラ家の台所の床に、男の顔のようなものが浮き出ているのを一家の母親が発見した。彼女は夫を呼んでぞうきんでふいてみたが、顔は消えるどころか悲しげな表情に変化してしまった。
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そこで一家はコンクリートの床の上にさらにセメントを流し込んで固めたのだが、3週間後には再び顔が浮き出てしまった。顔の話は村中に広まり、メディアや見物人が殺到。1972年の復活祭までに、何百人もの人々がペレイラ家を訪れたと言われている。地元の市長もこれ以上顔を壊すことを禁じ、研究のために保存するよう命じた。その後、この家が17世紀の墓地の上に建てられていることが判明。埋葬された人々の怨念や、この地で過去に起きた殺人事件の被害者の霊によるものではないか、などの説が流れた。
しかし、原因が分かって一件落着…とはいかなかった。その後も台所の床には大小様々な顔が現れ、表情を変えたり、さらにはうめき声まで聞こえるようになったのだ。台所を全面改装した後はしばらく怪現象は収まったものの、1982年からまた顔が浮き出るようになり、結局怪異は30年ほど続いたという。
皮肉なことに、このペレイラ家の怪異によってベルメスの町は観光地として有名になってしまった。今もペレイラ家は残されており、実際に「浮かび上がる顔」の原理に関する調査もたびたび行われている。その背景にはやはり「顔が浮かび上がったという証言はペレイラ家による捏造ではないか」という疑念が付きまとっているからだ。
「床や壁に浮かび上がった顔の表情が変わった」とされているが、これは最初に顔を見つけたマリアの印象によるものが強いとする意見が存在している。継続してペレイラ家の顔を調査している研究家によれば、彼女の気分によって顔の表情や色が変わっているようだったという。そこから、妻の証言を受けて夫ディエゴが、顔料や溶剤を駆使して浮かんだシミを人の顔らしく調整していたのではないか、という疑惑が持ち上がったのだ。
しかし、2014年にスペインの調査報道番組「Cuarto Milenio」が顔の技術的分析を行った結果、画像について「絵の具で作られたものではない」「分析に採用された科学的知識と技術によれば、顔には外部からの操作や要素はない」という結論が出てしまったのだ。実際にコンクリート用の溶剤や塩酸、硝酸銀などを使って再現しようとしたが失敗したという。また、初めに顔を見つけた妻マリアは2004年に85歳で亡くなっているのだが、その後もペレイラ家の床に新しい顔が現れ続けているという。
「ペレイラ家の顔」事件は、いまだに謎の多い事件なのだ。
山口敏太郎
作家、ライター。著書に「日本怪忌行」「モンスター・幻獣大百科」、テレビ出演「怪談グランプリ」「ビートたけしの超常現象Xファイル」「緊急検証シリーズ」など。
YouTubeにてオカルト番組「アトラスラジオ」放送中
参考記事
Creepy faces keep appearing in kitchen floor sparking chilling 'conjuring' theory(Daily star)より
https://www.dailystar.co.uk/news/weird-news/creepy-faces-keep-appearing-kitchen-25147474
Caras de Bélmez(wikipedia)より
https://es.wikipedia.org/wiki/Caras_de_B%C3%A9lmez