たけしは2021年2月発行の『コロナとバカ』(小学館新書)内で、「みんな自分の現在の生活に不安を抱えているのに、大企業や政治家ばかりが潤うようなお祭りに税金をガンガン注ぎ込むなんて許されない」と批判している。たけしのこうしたスタンスは時流に乗っかったものではなく、かねてから存在していた。
2019年にマラソンと競歩の開催地が、東京から札幌へ急きょ変更に。今にして思えば、この時からIOCの強引な体質が見え隠れしていたと言えるだろう。これに対し、たけしは「もうやめた方がいい。『五輪は返還』ってね。『やんないよ』ってね」と中止に言及。さらに、「ロス五輪から怪しいと思っていた。五輪でもなんでもねえよと」とコメントしている。1984年のロス五輪は開会式の盛大な演出、テレビ局からの高額な放映権料の徴収など、商業五輪がスタートした大会と言われる。たけしは『24時間テレビ:愛は地球を救う』(日本テレビ系)に批判的なことでも知られ、オリンピックにも同様の「うさんくささ」を見ているのかもしれない。
>>爆問・太田、たけしの意外な素顔を暴露「誰にも会わないところでガッチガチに緊張していた」<<
さらに、2016年にオリンピックの予算が当初の約7300億円から約3兆円に膨らむ報道に際し、『新・情報7days』(TBS系)内で、石原慎太郎元東京都知事から「オリンピックをやれば3兆円儲かる」と言われた裏話を披露。収入と予算が同じのため、「もう損するだけ」「儲かるのは建設会社だけ」と皮肉っている。
たけしは『コロナとバカ』では、日本人の「お祭り体質」も批判している。オリンピックの後にも、2025年に大阪万博のほか、カジノ誘致などが続く。経済的なイベントをカンフル剤として活用しようとする政府の甘い姿勢を見抜いている。たけしのオリンピック否定論は単なる思いつきではなく、こうした背景も踏まえて出てきた言葉なのだろう。