男性ファッション誌『smart』(同)での同名人気連載を書籍化した一冊。もともとは、川島が自身の公式Instagramでスタートさせたもので、人気芸人の写真と共に「#(ハッシュタグ)」を使って一言、大喜利的に芸人を紹介するものだった(例:あばれる君に『#合掌しながらプールの前のシャワーを浴びて修行と毎年言ってる同級生』など)。彼がこの大喜利を始めてからは、インスタのフォロワーも急増。川島にしか生み出せない超人気コンテンツとなっている。
今回、川島にはリモート形式でインタビューを実施。本作のことはもちろん、コロナ禍での仕事内容の変化についても語ってもらった。
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ーー『タグ大喜利』はインスタから派生して、雑誌連載、そして『麒麟・川島の#ハッシュタグバトルツアー』(読売テレビ系)という番組にもなりました。改めてこの反響をどう捉えていらっしゃいますか?
ラッキーでしかないです。もともとインスタでやっていたのも、ボクサーでいうシャドーボクシングしていた状況やったところを、リングに上げてもらったような気持ちです。周りの皆さんのおかげでしかないですね。
ーーつけやすい人、つけにくい人は?
その人にいい意味で味が付いていないジャルジャルの後藤(淳平)くんとかつけやすいですね。彼も(コントの中で)何百人と演じてきたと思うんですけど、好青年に見えることもあれば、サイコな人間にも見える絶妙な雰囲気と顔を持っているんで、後藤くんに関しては、唯一タグがつきすぎてカットするという事態が起こりました。
ーー(笑)。ターゲットはどうやって決めていたんですか?
まず、第一に“怒られるかも”ってギリギリのところにいくので、タグをつけても怒らない人ですね。あと、一番大事なのが、心から芸人として好きな人。今回、本に載っている人は全員面白いと思っているし、尊敬しているし、人間性もすごい人やし。その尊敬がないと、タグをつけても失礼になるんで、そのあたりは気をつけています。
ーー確かに。たくさんのタグの中で最後は大喜利ではなく、尊敬の一言が書かれていますよね(千鳥・ノブに『#努力を積み上げて天才になった芸人』など)。
僕の角度からそう見える……という照れ臭い文章ではあります。一番時間をかけているかもしれないです。
ーー芸人さんからの反応はどんなものがありましたか?
ブラックマヨネーズの小杉(竜一)さんが、まだSNSをやっていなかった頃、『タグ大喜利』の説明も難しいし、“大丈夫か”って思って「カッコイイ写真を撮らせてください」って依頼して、(無断で)載せたんですよ。
小杉さんの『タグ大喜利』がバズって、朝のニュース番組や夕方のワイドショー番組が取り上げてくださいまして。フォロワー数も10万人くらい一気に増えたんで“良かった”と思っていたら、小杉さんから「あれってどういうこと?」メールが……(笑)。ちゃんと説明したら、「いやいや、めちゃくちゃ面白いから続けてくれていいよ」って優しい言葉をかけてくださいました。
それで、インスタを見てくれる後輩も増えて、霜降り明星とか和牛とか、EXITのりんたろー。くんとか、「インスタのやつですか? 出してくれるんですか?」って下手に出てくれるんで、めちゃくちゃありがたいです。
ーーご自身の中で思い出深い投稿はございますか?
フォーリンラブのバービーちゃんの写真で大喜利を考えている時、飛行機の中でめっちゃ考えていたんですけど、その一部始終を知り合いの女子アナに目撃されたんですよ。写真をじっと見ているし、たまにニヤッと笑ったりしていたのもあって、飛行機降りるとき、女子アナが「川島さん。良かったら(バービーとのデートを)セッティングしますんで」って言われて……大変な誤解を生んでいるなと。
ーー(笑)。「出してほしい」と逆オファーされることはなかったんですか?
宮川大輔さんもそうですし、あとは戸田恵子さんですね。戸田さんが僕のインスタをめっちゃ見ているらしくて「(『タグ大喜利』に)出るのが夢」って言われたんですけど、恐れ多いと(笑)。大喜利が浮かんだとしても、吉本が怒られることになるから、「もしどうしてもと言うなら、吉本に移籍していただいてからになります」っていう話をしました。
ほかにも、ウーマンラッシュアワーの中川パラダイスくんからも「出してください」ってきましたけど、これはごめんなさい。実力不足ということで予選落ちでした。マイルールとして、自分が心から尊敬している人を出すってことなんで(笑)。
ーーこれからタグをつけたい芸人さんはいらっしゃいますか?
ウチの相方(田村裕)を入れたいと思ったんですけど、よう考えたら漫才の中で、すでに例えていたんですよ。「無印の封筒」とか「チャーシューの側面」とか、めちゃくちゃ言うてたんで、つける必要はないと思っていたんですけど、買った人にだけ分かるように田村が隠し要素で入っているんで、探していただきたいですね。
ーー当初よりもタグの数が増えたとお聞きしました。
この自粛期間のおかげで、1人1、2個くらいタグは増えています。消したやつもありますし、胸を張って出せる本に仕上がりました。
ーーコロナで活動ができない中、お笑いに触れる唯一の時間になったわけですね。
そうですね。(本を制作していた)4月は週1~2日が仕事で、ほぼ休みに近かったんで、大喜利に注ぐことができました。それまで芸人としてグーッと働いてきて、ポンと休みになったんで、試合に出られていないし、“筋肉なまっているんちゃうか”って不安しかなくて。その間の自主トレは、全部この本でやった感じです。
ーーコロナ時期に、新たに取り組んでいることは?
家族といる時間をめちゃくちゃ増やしたのと、サックスをやり始めました。去年、40歳になって、何かレベル1から始められることないかなって思った時に、楽器をやっていなかったなって。そのタイミングで藤井隆さんに「川島くん、サックスやったらいいと思うよ」って言われて、藤井さんのYouTubeチャンネルで追いかけてくれることになりました。あんまりやっている人おらんし、漫画『BLUE GIANT』(サックスプレイヤーが主人公の話)も好きやし、映画『ブルース・ブラザーズ』も好きやし、トンと入って始めたのが今年の1月やったんです。
テナーサックスをすることになったんですけど、教えてもらっている先生から、「川島さんがテナーサックス選んだのはすごいことですよ。テナーはアルトより低いんで、声帯が低い人とめちゃくちゃ相性がいいんです」って言われて……。“藤井さんはそこまで考えて勧めてくれたんや”と思っていたんですけど、後日聞いたら「ベロベロで覚えていない」って言われて(笑)。
ーー感覚が鋭い方なんですね。
どうしても僕が左脳で考えてしまうところを右脳でやってくれている感じがします。藤井さんは『吉本のパワースポット』やと思っていて、誘われたら絶対飲みに行くし、「やってみたら?」って言われたものは絶対やろうと。で、巻き込まれた方が絶対オモロい方向にいくんです。
ーー先ほどYouTubeの話が出ましたが、川島さん自身はYouTube進出考えていらっしゃいますか?
YouTuberと芸人ってすごい深い川があったと思うんですけど、(コロナ禍の)1か月でだいぶ埋まったと思うんですよ。YouTubeやっている先輩・後輩はもれなくいい顔しているなって思うし、“やりたいことを全力でやれている”ってことで憧れてはいるんですけど、自分は、そういった“やりたいこと”が『タグ大喜利』やったりします。もちろんYouTubeも、これから挑戦したいフィールドですけどね。
ーー最後に見どころを教えてください。
(コロナで)休んでいる中で、自分のお笑い力を全部ぶつけました。今後、ここまで時間を割くことはできないし、この熱量で本を出せないと思っています。いうて、ボケだけで672個載っているので、絶対どれかは笑うと思うんですよ(笑)。ぜひ僕のことを知らない人にも読んでほしいですね。
取材・文:浜瀬将樹
『#麒麟川島のタグ大喜利』
著者:川島 明
発売日:2020年5月25日
価格:本体1,200円+税
判型:A5判
ISBN : 978-4-8002-9770-9
雑誌 : 66593-14