さんざんじらされた民主党は、審議促進戦術から正面対決戦術に切り替えた。これで政局は再び振り出しに戻ったかたちだが、小沢氏はすでに麻生首相を追い込む急所を握っているという。
民主党にとって悩ましいのは、いまさら強硬戦術に切り替えることが国民の支持を得られるかどうか。新テロ対策特別措置法改正案について「早期採決」から「議論をつくす」と態度を一変させるような対応は、解散総選挙に向けて悪影響を招きかねない。麻生首相がここぞとばかりに“民主党はおかしい”と自己チューぶりを糾弾することは目に見えている。
ねじれ国会である以上は結局、麻生首相も福田前首相と同じような苦境に直面する。野党に抵抗されて思うように法案を成立させられず、苦虫をかみつぶすしかない。それを避けるためには、民主党を徹底的に悪者に仕立てあげ、少しでも内閣支持率を上げて解散を打つしか手はない。
しかし、永田町関係者は「小沢氏もまたそんなことは百も承知。それでも勝算があるから対決路線に戻すのだ」という。
「麻生首相は強いリーダーシップを発揮しようと思うあまり、鼻につくほど高圧的な態度を取り続けている。ホテルのバーで飲食しまくっていた件でも、必要以上に記者を見下して『答えろ!』などと迫った。小沢氏にしてみれば、麻生氏の攻めどころが分かったうえに、逆ギレしやすいという弱点までつかめた。このへんを徹底的に攻めるでしょう」(同関係者)
首相は結果責任が問われるもの。金融危機対応や景気対策を優先して解散総選挙を先送りするのは結構だが、国民にとっては結果がすべてだ。景気がよくならなければ麻生氏の判断、手腕に疑問符をつけざるを得ない。
野党党首である小沢氏はその点、結果を問われないから好きなように批判できる。“じゃあ、あんたやってみろよ!”と言わせるまで、ネチネチと麻生首相をいたぶる可能性がある。
解散越年を決めた首相に対し、公明党は粘り強く説得する構え。来年夏の都議選は同党にとってきわめて重要な戦いであり、なるべく選挙間を空けて臨みたい。麻生首相の政権運営が見ものだ。