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奈良の神社話その十九 鳴動せしご神体が告げしもの──奈良市・天之石立(あめのいわたて)神社

 神による変化の予兆とされる「鳴動」。談山神社背後の御破裂山に葛城山、中将姫を巡る竜田川など、奈良だけでも数多くの伝説が残る。明治に入っても天理市の天神山が鳴動し話題になったとされ、この現象はいつの世も人々を惹きつけるようだ。

 ご神体が鳴動したと伝わるのは天之石立神社である。
 同社はその名の通り、屹立する巨岩がご神体。三塊あり、それぞれ前伏磐・前立磐・後立磐と呼ばれる。中央の前立磐は板状で、高さ6メートル、幅7.3メートル、厚さ1.2メートルという巨大さ。簡易な拝殿のみで社殿はなく、樹間に張られた注連縄の中、苔にしっとりと覆われてたたずむさまはとても神秘的だ。

 天手力雄命が天岩戸を押し開けた時、二度と閉じられぬようにと遠くに投げた扉石が同地に落下、後に「神戸岩(かんべいわ)」と呼ぶようになったと伝わる。一帯に散らばる巨大な自然石のすべてに3132柱の神々を祀るとされ、古代の神祀りを垣間見せてくれる。
 信濃の戸隠山も岩戸の扉飛来伝説を残す。山と岩ではスケールが違うが、どちらを眺めても「なるほど」と納得させられてしまう。古代の人々の想像力に脱帽というところだ。

 さて、霊地とされていたこの鎮座地と周囲の神戸四か郷を関白・藤原頼通が春日社に寄進すると神戸岩が鳴動した。以後、朝廷に慶事のある度に鳴動したという。
 鳴動といえば変事の前触れとされるのが定番だが、良い知らせもあるらしい。国の安泰に通じたと伝わる竜田川とともに、神戸岩に今こそ奇瑞となる鳴動をしてほしいものだ。

 また同社は柳生藩主代々の信仰が篤った。ここで修行に励んだという柳生宗巌が一刀のもとに斬ったとされる巨岩・一刀石も残る。

※写真「同社約100メートル南にある一刀石」

(宮家美樹)

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