この放送を受け、芸人の借金に注目が集まっているが、スズキを超える借金王といえるのが吉本興業所属のかつみ・さゆりだろう。2人が抱えている借金の総額は約1億7千万円、約2億円近いのだ。ちょっとした会社員の生涯年収ほどである。なぜ、彼らは借金まみれになってしまったのか。
借金を作ったのは夫であるかつみである。バブル期に大阪にマンションを購入し転売した資金を元手に株式投資などの財テクで3億円ほどに資産を増やすも、バブル崩壊により1億7千万円の借金を背負ってしまう。さらに、根っからの人の良さから借金の連帯保証人を引き受けてしまうこともあった。
ただ、借金まみれのかつみだが、あるクイズ番組で共演したさゆりからのアプローチで結婚。南海キャンディーズの山ちゃんが「ブサイクでも女優と結婚できた」と話題になっているが、さゆりもミスコン常連の美人タレントであった。さながら、かつみは「借金まみれでも美人タレントと結婚」といったところか。
さゆりがかつみに惹かれた理由は、信用取引で大損をぶっこいたかつみが、それでも電話口で「それなんとかなりまへんか?」と大声でトボケており、そのポジティブさに惹かれたのだとか。クズ芸人スズキも人柄は明るく、「お金は返したいんですけど」が口癖であった。やはり、借金を抱える人間はどこか似ている気質もあるのかもしれない。
晴れて夫婦となった2人。ここから二人三脚で、借金返済を目指してさまざまな投資に手を出す。その内容は大クワガタムシの繁殖、一口馬主、猫の繁殖といったもので、どれもギャンブル性が高いものだ。窮地に陥った夫婦は、親交のあった中田カウスのすすめもあり、最後の手段としてコンビを結成し夫婦漫才を始める。タレントの知名度を生かしたラーメン店や、スイーツ店を開くもこちらも失敗。借金は一向に減らない。これは金額が大きすぎるため、利息を払っているだけで元金が減らないためだ。スズキの場合は遊ぶ金欲しさの享楽的な借金であったが、かつみ・さゆりは遊んでいたわけではない。サイドビジネスも借金返済の足しにと考えてのこと。ここは生真面目といえる。
借金返済を目指して寝る間もなく活動をしていた2人だが、さゆりが病魔に倒れる。それを乗り越えたことで夫婦の絆はさらに深まったようだ。この話は『しくじり先生 俺みたいになるな!!』(テレビ朝日系)でも披露され、感動エピソードとして語り継がれている。
現在は借金返済の目処はほぼついているのだとか。ただ、収入が安定して続く想定であり、完済時にかつみは76歳、さゆりは70歳になっているようだ。それでも「人生はそこから」とも考えているという。かつみ・さゆりはポジティブかつ生真面目であるといえる。悪い意味でのポジティブ、すなわちクズ思考のスズキにも見習ってもらいたいものだ。