昔のプロレス界も似たようなことがあって、いい会計士の人がいるって聞くと、そこにみんな通って節税してもらってた。
「総年収の40%ぐらいまでなら経費で認められる」って話なんだけど、年収が8000万円くらいになってくると、40%で3200万。月250万円だから、そんな額は経費でまず使わないよ。プロレスラーの経費なんて、コスチュームとトレーニング代ぐらいだから、毎月、サイパン合宿でも行かないとなかなか経費が積み上がらないんだよ。
でも、税金を払いたくない人は、どうにか経費にしてくれと会計士に頼む。会計士だって、顧客に言われたらやらざるをえない。それで申告が通ったりすると、「先輩どこでやったんですか?」「俺もお願いしますよ」って広まっていく。
でも、その会計士が目を付けられると、芋づる式でやられちゃう。
俺なんかは、払うモノは払った方がいいっていう考え方だから、経費がないんだったら、そのままの税率で収めてもらってた。
そもそも税金の小細工なんてのは、税務署側にはほとんどバレてるんだよ。芸人さんの件も、税務署は不正が分かってて泳がすというか、ずっと様子を窺ってたんだろうね。で、5年くらい貯まれば2000万くらいの不正会計ってのが見えてくるから、そろそろ行ったらまとまって取れる、と。
★K−1の石井館長は脱税で刑務所入り
ウチの会社は、設立して3年目くらいに任意で税務調査を入れたんだけど、税務署員に「年度末の売上が、翌年度にまたいでますね。実際には前年度のことなんで、追加で税金を納めないといけません」ってすぐに申告漏れを指摘された。その分を計算したらピッタリ50万円。署員1人が1日動いたら50万円分くらいの経費が掛かるみたいだから、最初から向こうは取る数字が決まってるみたいだったよ。
だから、あの芸人さんの脱税も、最初から金額のメドはついていたし、指摘をされたらグウの音も出ないから、すぐ払ったんだと思う。ただ、今回マズかったのは、見つかっても払えば済むと思ってたところだな。
市民感情を抜きにしても、脱税の罪って重いんだよ。不倫とか薬物なんていうのは個人の問題だけど、脱税は社会問題。国も厳しく追及するし、納税の義務はキツく守らなくちゃいけない。下手したら堀の中に入れられてもおかしくないわけだから。
K−1の石井館長なんかは、脱税が見つかったときに、払う、払わないで揉めて、なかなか折れなかった。結局、裁判までやったんだけど、負けて刑務所に1年ぐらいぶち込まれたわけだから。
金額の大小もあると思うが、税金のごまかしについては、今後はもっと厳しくなると思う。キッチリしておいたほうがいいぞ。
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蝶野正洋
1963年シアトル生まれ。1984年に新日本プロレスに入団。トップレスラーとして活躍し、2010年に退団。現在はリング以外にもテレビ、イベントなど、多方面で活躍。『ガキの使い大晦日スペシャル』では欠かせない存在。