「クラックしたサイトは、好きなように編集しましたから、広告リンク(ユーザー個別に生成される。)がぼくのHPであることには、誰にも疑いは持たれないです。月末集計の翌月15日支払いとかで、振込みがありました」
通帳を確認したが、日々2万円、2万3千円、1万4千円…などと振り込まれていった様は壮観である。子供がお金をおろすのも、キャッシュカードなら容易に出来る。
やがて中学に上がった十文字さんは…。
「細々と稼いでいましたが、中2になって、1つの会社で20個ほど広告を契約できたことがあって、その月100万円儲かったんです。塾の費用、携帯代、食費、服の費用、仲間と乗る原付きバイク3台購入…これらすべてこのお金で払いました。後輩や友達をつれて、寿司屋でトロを並べたりもしました」
次第に中学に行くことはなくなっていった。
「中2の夏には彼女も出来ました。1か月記念日にペアリング、2か月にウィルコムを購入したんですが、3か月目に振られました。ショックでしたが仕方ないですね」
大金を手に遊びまわっていた十文字さんだが、いつバレたのだろうか。
親には、「普通にアフィリエイトで稼いだ」と言っていたが、さすがに額が額なので不審に思われていたらしい。
「しかし家の生活も助けたので、あまり追求はされませんでした」
ただし、その口座自体が、親がつくったものだった。子供のやることは、意外なところにぽっかりと隙があるものである。
「ある日、アフィリエイト会社が、これはおかしい、となったようで、メールで、【○○株式会社の××です。お伝えしたいことがございますので至急ご連絡ください】というようなのがきました。嫌な予感がしたので無視をしてみたところ、【○ーバンクより資金繰越返金請求】というメールが届いたんです。振込みの返却要請でしてそのメール内容は、子供からみてもただならぬものであるのはわかりました」
返却要請額は、50万ほどだった。
「『僕もよくわかりません、すいません!><』と必死に謝りました。お金は遣っていて少したりませんでしたが、なんとかかき集め、返金したんです。そして、運よく許してもらえた。しばらくは、足を洗っていました」
3年生の春のある日、幼稚園からの幼なじみであり、小学校時代一緒につるんでいた友人がいきなり家に来た。
「おい、学校に来ようぜ、みんな心配してる…」
持つべきものは、友達である。
十文字さんは登校を再開し、高校にも行った。が、なじめず中退。現在は、
「いまだにランキングサイトを乗っ取り、勝手に月極め広告を契約しています。振り返ってみるといろいろ懐かしいですね。気がつくと、昔は出来ていた不正ができなくなっていたり。当時、対策をかいくぐれるように頑張ってみたり、我ながら小学生でよくやったと思う」(了)
ライター 澤田瑛和