普段はひなびた雰囲気の海辺の街にも人が押し寄せて道路はたちまち大渋滞…。誰でも同じでしょうが、混雑に巻き込まれるのはあまり気持ちがよいものではありません。
それでも、勢い勇んで海水浴場周辺に突撃すれば、水着のオネイサンが眺め放題! ある意味、実に魅力的な時期なのですが、もはや釣りどころではなくなってしまうんですよねぇ。色んな意味で竿が出せませんから。
そんなワケで、この夏休み期間は市街地のドブや都市港湾の沖防波堤、あるいは離島といった渋滞や混雑の懸念があまりない場所で竿を出すことにしようと考えております。で、今回は兵庫県尼崎市の武庫川一文字(通称ムコイチ)に行くことにしました。
大阪や神戸といった都市部から近い釣り場なのですが、とりたてて風光明媚な街ではないため、観光渋滞からは無縁。それでいて沖に設置された一文字堤防は長大で窮屈な思いをすることはまずありません。
沖合に位置する地続きの堤防ですから、潮通しは申し分なく、夏場はタコ、アジ、イワシ、クロダイ、サワラやブリなどの回遊魚まで、狙える魚種は実に多彩で、まさに身近な夢の釣り場なんですね。
竿を担いで早朝の阪神電車に乗り込み、武庫川駅で二両編成の阪神武庫川線に乗り換えて、終点の武庫川団地駅で下車します。住宅街を抜けて乗船場に着く頃には、すっかり陽が昇っておりました。
受付を済ませてから船に乗り込んで、いざ沖へ。船上で浴びる海風は心地よく、毎度のことながら海から眺める六甲山と山裾に広がる神戸の街並みの景色は、何ともイイものであります。
★さすがムコイチ!ここぞ! で連発
しばらくして堤防が見えてくると、堤防上はそれなりに賑わっております。まぁ、好天の休日ですから仕方ありません。「あ〜、オレも早く竿を出してぇなぁ〜」と、逸る気持ちを抑えて堤防に渡ります。
狙う魚は、西日本で“ガシラ”と呼ばれるカサゴ。胴突き仕掛けと呼ばれるオモリが下に付いた仕掛けにエサのアオイソメを付け、堤防の継ぎ目に沿うように仕掛けを落としていきます。カサゴは障害物に潜む魚ですから、アタリが出る場所を求めてテンポよく探っていく作戦が有効です。
と、何カ所目かの継ぎ目で早々に反応がありました。オモリの重さを感じながら仕掛けをゆっくりと下ろしていくと、途中で「フワ〜ッ」と軽くなる、“食い上げ”と言われるアタリが出ました。すぐにリールを巻きながら竿を煽ると「グゥ〜ン」と重量感が伝わります。そのまま巻き上げて手にしたのは20センチほどのカサゴ。幸先のよい出だしに気分は上々
エサを付け替えて再びエサを落としてやると、またしても同じようなアタリでカサゴがヒット。う〜ん、さすがは“ムコイチ”! 魚影が濃い!
その後も“ここぞ!”と見込んだ大きめの継ぎ目では高確率で反応があり、順調に釣果が続きます。
ただ、この手の根魚は食い意地が張っており、浮かれて釣りまくるとあっという間に数が減ってしまいます。ゆえに小ぶりな個体はリリースすることが大事。小型は放流しつつ、20センチほどのキープサイズを5尾確保。食べるには十分な量なので、竿を畳んで迎えの船に乗り込むことにしました。
ムコイチは船が1時間おきに往き来しているので、気が向いた頃合でチョイと出かけ、気が済んだらチャチャッと帰って来られるのが魅力。日中の暑さが厳しいこの時期には、実に有難い次第であります。
★上品な白身に冷酒グイグイ
さて、カサゴ料理といえば、煮付けや空揚げが定番。ただ、ある程度の大きさの個体なら、刺身でいただくのがオススメ! 今回は見た目も涼しげな姿造りにして、賞味したいと思います。
愛敬と武骨さが共存する容姿を楽しみつつ、透明感あふれる美しい白身をパクリ。う〜ん、クセのない上品な甘味が感じられ美味しいですなぁ〜。灘の銘酒、『黒松剣菱』が淡白なカサゴの甘味をさらに引き立ててくれます。やはりお造りには、日本酒が一番です。
気軽に、思い立ったタイミングでヒョイッと出かけ、渋滞や混雑に巻き込まれることもなく帰宅。1日の締めは美味しい肴をつつきながら晩酌。最高です
「海に出かけた感」は薄いですが、身近な場所で気軽に楽しむ海釣りもこの時期にはいいもんでっせ〜♪
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三橋雅彦(みつはしまさひこ)子供の頃から釣り好きで“釣り一筋”の青春時代をすごす。当然の如く魚関係の仕事に就き、海釣り専門誌の常連筆者も務めたほどの釣りisマイライフな人。好色。