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怖いのは熱中症だけじゃない“真夏の脳卒中”四つの危ない兆候(2)

 浦和市の会社員、金子信彦さん(=仮名・44)は、昨年7月中旬、朝起きると右半身が動かず言葉も出ないことに気付いた。大学病院の脳神経外科で診察を受けたところ、首の太い血管(内頚動脈)に心臓でできた血栓が流れてきて詰まってしまい、脳梗塞で重症だったという。
 入院前日は、関東地方を猛暑が襲い、浦和市も33℃前後の暑さ。やや太り気味の金子さんは、営業関係の仕事がら外を歩きが多く、汗も人一番かくタイプ。ただ、熱中症を避けるための心得は持ち合わせていたため、冷房の効いた地下街に避難したり自販機を利用して、水分補給などを積極的に行っていた。

 しかし、帰宅後の入浴や冷えたビールで体を癒やしたまではいいが、そのまま床に入り寝込んだ。ビールやアルコール類は、寝ている間に体温を上げ、血圧も上昇させることに繋がり、体内の水分が奪われる。結果、血液は濃度を増しドロドロ状態となり、血栓ができやすい状態になるのだ。
 「あの日は熱帯夜でしたが、酔い任せで眠ってしまった。寝る前に水分の補給なんて考えもしませんでした。主治医にいろいろ聞いて、水分の貴重さと摂取の大事さを知りました。一歩間違えば命も危ないところでしたから…」(金子さん)

 金子さんの治療は、発症2時間後に血栓を溶かす働きがある薬「t-PA(アルテプラーゼ)」の点滴を受けたが、太い血管には効きにくい。そのため、「血管内治療」を受けることになり、足の付け根の血管から細い管を血栓の詰まった部分まで通し、血栓を直接取り除く治療法が行われた。
 主治医の話では、金子さんの血管壁は破れやすいため、金属製の網状の筒を入れて血管壁を補強する治療も実施。発症から4時間弱で脳内の血流が完全に再開した。3カ月後、金子さんは、多少の後遺症があるものの職場復帰を果たした。
 「私の場合、もちろん単に水分を補給していれば脳梗塞にならなかったとはいえません。生活習慣を改めなければならない問題もあったと思いますが、水分補給や暑さ対策も、しっかりと考えないといけない事もよくわかりました」(金子さん)

 脳卒中というと、とかく中高年の病気と思われがちだが、最近の調査では若い人にも脳疾患の病気が増えているという。
 専門家に言わせると、「若年性脳卒中」に明確な定義はない。おおむね40〜50歳以下で発症した場合を指すという。50歳を超えると脳梗塞が多くなり、若年者の場合は、むしろ脳出血や、くも膜下出血が多く発症するのが特徴だという。
 若年層の脳出血の原因は、脳静動脈がとぐろ状の「脳動静脈奇形」、血管の塊ができる「海綿状血管腫」、脳動脈が詰まり、細い管がたくさん生じる「もやもや病」などが多い。血管がもろいため、運動やトイレでいきむなど血圧が上昇する行動がきっかけに発症しやすくなる。また、炎天下の環境やサウナ、激しい運動などで血液中の水分が奪われていると、発症度が高い。
 高齢者の場合はもっと危険だ。加齢とともに喉の渇きを自覚しにくくなるため、それを防ぐには、夏場は意識して1日1〜1.5リットルの水を飲む必要があり、体の異変には常に敏感になっておく必要がある。

 最後に、次のような症状が見られたら、迷わず救急車を呼ぶべき四つのポイントを挙げておこう。
(1)片方の手足・顔半分のマヒ、シビレが起こる。
(2)ろれつ回らない、言葉が出ない、他人の言うことが理解できない。
(3)力はあるのに立ち上がれない。歩けない、フラつく。
(4)片方の目が見えない、物が二つに見える。視野の半分が欠ける。

 熱中症対策も重要だが、この夏、あなたの脳にも負担がかかっている可能性があることを認識しよう。

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