『月刊ヒーローズ/HEROS』で連載中の本作は、板倉が漫画家・武村勇治氏とタッグを組んだクライムヒーロー物語。現代にはびこる悪を、法外の手段で排除する朝比奈陽人と浦瀬飛月の活躍を描く。
このたび、原作者の板倉にインタビューを実施した。作品に関することはもちろん、芸人としての活動についても大いに語ってもらった。
ーーヒーローが主人公の作品で占める同雑誌で、原作を担当することになった経緯を教えてください。
実は当初“やろう”と思っていた雑誌でできなくなって、編集の人が『HEROS』で連載を持っていた武村さんに「板倉くんがこんな話をやりたいって言っているんだけど」って話をしてくれたんです。ちょうどヒーローの物語だったし“やりましょう”って。
ーーでは、雑誌ありきではなく、もともと原作があったんですね。
そうなんです。ただ、ウルトラマンや仮面ライダーの漫画が掲載されている雑誌なので、それと比べると現実寄りの作品かもしれないです。
ーーどんな作品なのでしょうか?
悪者をぶっ倒すというよりも、そいつら(悪者)によって被害を受けている人を救うっていう話です。あくまで目的は、悪党を懲らしめることでも裁くことでもなくて、被害を受けちゃった人を楽にするっていうことですね。
ーー板倉さんは過去、小説にも挑戦されていますが、やはり漫画原作とは作り方が違うものですか?
脳みその使い方は一緒かもしれないですけど、表現方法が違いますね。小説は視点や人物を決めて、そいつが見えた景色をどんどん描写していって読者に想像させなきゃいけないんですけど、漫画脚本の段階だと、面倒なところは“見取り図を別紙で書きます”って絵で描いちゃいますから。そういう感じなので、僕の脚本を世に出しちゃうと小説として読めるものではないと思います。
ーー板倉さんが書かれた小説『トリガー』、『蟻地獄』も武村先生が漫画を担当されました。どんな方なんですか?
最初はホテルのラウンジバーでお会いしたんですけど、完全に「その筋の人がいる」と思いました。丸坊主でかなりいかつい感じでしたが、話してみるとめちゃめちゃいい人でしたね。
ーー自分が作り上げた空想の世界が漫画になるのはどんな気分ですか?
漫画家って、男が一瞬でも考える夢の中に入っていると思うんですよ。“漫画を描けない”って諦めていたものが、1巻として形に残るのはうれしいし、達成感もありますけど、反面“外したらヤバイ”、“次をやらせてもらえない”っていう恐怖感も乗っかっています。原作だけやって漫画を任せている、って相当恵まれた環境にいると思っているので、それがなくなるのはやだなーって。
ーー芸人活動についても教えてください。今後やりたいことはありますか?
それも疲れちゃいましたね〜。“これやりたい”って言ったって、叶わないのが続きますからね(笑)。あと思うのは“テレビがつまんなくなった”って嘆いていても、何の生産性もないなと。結局、その問題を考えたところで誰も悪くなかったりするんですよ。
僕も“ワイプが見づらいからやめてほしい”とか“飯食って「ウマい」とか言うために芸人になったわけじゃない”って言うんですけど、別にそれ、ディレクターが悪いわけでもないんですよ。その人だってお笑いをやりたかったかもしれないけど「それでは数字が下がるからコッチをやってんだよ!」ってことじゃないですか。
だから、別に誰も悪くない問題にいきり立っていてもしょうがないし、まだいっぱい残っているお笑いの仕事に最善を尽くしたいです。
ーー芸人活動を全うすると。
レギュラー番組もないですからね。気楽なもんですよ。
ーー相方の堤下敦さんとはどんな活動をしていきたいですか?
それも、こっちがコントロールできるわけではないですからね。“復活したんだから俺らを売らせろよ”って言えることでもないですし、これから1本もコンビとしてのオファーがなかったら事実上終わっていた話だし……。そのへんも年齢でしょうかね。俯瞰(ふかん)で見られるようになりました。
ーー若い時は違ったんですか?
“お笑いやってやんだよ”みたいな感じです。アツかったですよね。お笑いにしろストーリーにしろ、生まれた時に放出するシステムみたいなものは残ってほしいと思います。
ーー最後に『マグナレイブン』1巻の見どころを教えてください。
「暴力反対」って言葉はあるけど、暴力で解決できる問題ってけっこう多いと思うんです。まともな人間だったら同じようなことを考えていると思うのですが、この作品では、“力があったらあんなに悲しい思いをしなくて済んだのにな”っていうところを全部助けていきたいです。今のところ1巻に関しては、“やっちまえ!”っていうやつしか出ていないので(笑)、爽快だと思います。
『マグナレイブン』1巻
原作:板倉俊之
漫画:武村勇治
発売元:ヒーローズ
全国書店、ネット書店で絶賛発売中!
(取材・文:浜瀬将樹)