釣り物が選り取り見取りのこの時期、堤防などのいわゆる「陸っぱり」から狙って面白いターゲットに、カワハギが挙げられます。
まだ水温が高いため浅場で活発にエサを漁るうえに、季節が進むにつれてキモ(肝臓)が肥大中! 気軽に竿を出せる堤防で、美味なカワハギを狙うことができるこの時期は、キモ好きとしては見逃せません!
ということで、カワハギを狙って静岡県沼津市へと出かけました。急深な駿河湾に面したこの一帯の海岸線はカワハギの魚影が濃く、点在する漁港や堤防のどこからでも狙うことができるのがよいところです。
朝の沼津駅に降り立ち、釣り場へと向かうバスに乗り込みます。と言いつつ、この時点ではまだ目指す釣り場は決まっておりません。ワタクシが乗り込んだバスは、海沿いの県道を進むルートとなっており、のんびり車窓を眺めながら「よい雰囲気の所で降りればいいか…」というユル〜い旅を可能にしてくれます。
たまには肩肘張らずに「いい旅釣り気分」なんてのもアリかなぁと…。ま、肩肘張って釣りに出かけたことはほとんどありませんが…。
沼津駅を発車したバスは狩野川を渡り、やがて車窓からは内浦湾の青い水面が見えてきました。いや〜、どこもよさそうに見えますなぁ。さて、どこで降りようか…。
この作戦で気を付けなければならないのは「行きすぎない」こと。「この先さらによい場所があるのではないか?」などと欲を出すうちにキリがなくなり、結局は終点近くのショボイ場所で竿を出すということになりがちなのです。
例えるなら、エロ動画のサンプル探しのごとく、「もっとよいのがあるのではないか?」と夜更けまで見続けた結果、探し疲れてしまって、たいしたモノでもないようなヤツで昇天するようなものかと…。
さて、穏やかな内浦湾をすぎて西浦の集落に入り、周辺では一番人気とされる木負堤防が見えてきましたが、朝方まで雨模様だったせいか長い堤防は閑散としています。むむむっ!
★居なくはないが型はイマイチ
「よし、ここにしよう!」
慌てて降車ボタンを押してバスを下り、勇んで堤防へと向かいます。長い堤防にはポツポツと釣り人が竿を出しているものの、スペースは十二分。先端寄りに釣り座を構えて竿を伸ばします。
まずは外海側に向かって思いきり仕掛けを投げ込み、置き竿にして魚が掛かるのを待ちます。
と、いきなりガツガツッと派手な反応が出て、ササノハベラが掛かってきました。まあ、この釣りの定番外道ですな。実は美味な魚ではありますが、まだ序盤ですし、今日はカワハギの気分なのでリリース。エサを付け替えて再び仕掛けを投げます。
それはそうと、秋晴れの下で凪いだ海に向かって思いきり仕掛けを投げるってのは、実に気持ちがよいものです。
そんな心地よい秋の海辺を満喫していると、またしてもすぐに竿先が絞り込まれました。竿を煽ると、先ほどよりも小気味よく力強い手応えが続きました。
「型のよいササノハ?」
そう疑ってかかったものの、浮いてきたのは本命のカワハギでした。う〜ん、ベラとカワハギの手応えはよく似ているので、特に投げ釣りの場合は区別がつきにくいですな。
何はともあれ早々に本命が釣れて、幸先のよいスタートです。んが、その後はササノハベラが連発…、肝心のカワハギは忘れた頃にポツリポツリ程度…。大きさも“ワッペン”と呼ばれる15センチ前後の小型が中心で、非常に微妙な状況。う〜ん、コレは釣り場を移動するしかありませんな。
★冷酒と肝醤油で至極のひと時に
まあ、小ぶりではあるものの、本命を数尾確保できました。キモの入りもまずまずで、食材としては合格です。カワハギといえば、美味な白身もさることながらキモが重要。個人的には、魚自体の大きさよりもキモの入り具合が重要なのであります。
で、今回持ち帰ったカワハギですが、質のよさそうな薄ピンクのキモがしっかり入っておりました。こりゃタマラン
醤油に溶いたキモを刺身に絡めてパクリとひと口。も〜超絶に美味
いや〜、カワハギのキモって、なんでこんなにウマイんだろう…。
余韻を楽しみながら、静岡県由比の地酒『正雪 純米大吟醸(神沢川酒造)』をグイとやります。しっかりとした香りと甘味、それに続く辛口な飲み口がキモ醤油の絡んだ刺身とマッチ。好みの女優さんのカラミを見つけて、思い切り果てたがごとく昇天いたしました。
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三橋雅彦(みつはしまさひこ)子供の頃から釣り好きで“釣り一筋”の青春時代をすごす。当然の如く魚関係の仕事に就き、海釣り専門誌の常連筆者も務めたほどの釣りisマイライフな人。好色。