A:私が患者さんに指導している方法の一つに、『さとう式リンパケア』があります。これは、愛知県の歯科医師、佐藤青児先生が顎関節症の対処法として開発しました。筋肉を緩めてリンパの流れを改善するメソッドで、温める部位によって腰痛にも効果があります。
この『さとう式リンパケア』は、他のさまざまな療法と大きく異なる考え方に基づいています。それは、体の中にある“空洞のバランス”を整えるというもの。
人間の体は空洞(腔)でできた筒のようなもので、口腔、胸腔、腹腔という三つの空洞(腔)と、それを取り囲んでいる筋肉によって支えられています。その空洞のバランスが円筒形に近ければ近いほど、体のバランスが整っているということになります。そして、このバランスが崩れることで、さまざまな不調が現れます。
腰痛に関しては、骨盤の位置が悪かったり、腹筋や背筋が固く緊張していたりしますが、これは「腹腔のバランスが悪い」状態です。この状態では、腰に負担がかかるため、腰痛が発生しやすくなるわけです。
そのバランスを整えるために、腹腔を包む筋肉、つまり、お腹や背中、お腹の奥深くにある筋肉を緩めます。すると、それに連動して骨盤の位置も調整でき、腰痛が改善します。
●『シェー体操』のやり方
腰痛に効果のあるメソッドに『シェー体操』があります。名前のとおり、“シェー”とそっくりのポーズをとりますが、この動きが腹腔の筋肉を緩めるポイントになっています。
1 床に横たわって両腕を伸ばし、下半身は上になった脚の膝を曲げて床につける。頭と床を平行になるようにする。
2 上側の腕を耳の横につける。下側の手を上の脇腹に軽く添える。目線は正面。
3 上側の脚を、膝を床につけたまま、自転車をこぐようにして8回まわす。これを4セットくり返す。
4 上側の肘を垂直に曲げて、肩を外側に開く。目線は上の手の指先に。
5 下側の手を腰の上に添える。このとき、小指の位置は骨盤の上にかかるくらい。3と同様、脚を8回まわす。これを4セット。
6 反対側も同様に行う。
3や5の、脚を動かす運動では、膝を床にするようにして、上下に動かすとまわしやすいでしょう。
腰の痛みが強い場合や、体が固くて動かせない場合、無理はしないようにしてください。できる範囲で動かすだけで、十分な効果が得られます。
首藤紳介氏(表参道首藤クリニック院長)
久留米大学病院小児科、大分こども病院、聖マリア病院、湯島清水坂クリニック等の勤務を経て、表参道首藤クリニック院長。自然療法や代替医療をはじめ、水素温熱免疫療法や再生医療(臍帯血幹細胞治療)などの高度先進医療を実践。