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貴乃花部屋の消滅は、ある意味“新貴乃花部屋”のスタートである

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貴乃花親方

「私貴乃花光司は本日、公益財団法人日本相撲協会に年寄を引退する旨の届けを提出いたしました」。

 25日に行われた会見の冒頭で、このような言葉を口にしたのは貴乃花親方。昨今様々な話題を振りまいてきた人物は、この度自らの部屋を閉め、協会を去ることを公に表明した。

 貴乃花親方が正しいのか、それとも協会側が正しいのか。現時点ではその真意を知る術はない。ただ、1つだけ言えるのは、今回の一件は角界にとって大きな損失であると数多くの好角家が考えているということだ。もちろん、筆者も然りだった。

 しかし、「土俵に育てられた私でもありますので、土俵には携わっていきたいという気持ちです」、「入門希望できるような少年たちに携わって、お相撲を少しでも教えられたらなと思っています」という貴乃花親方の言葉を聞くうちに、今回の一件は何も損失ばかりではなく、むしろ利益がもたらされる可能性もあるのではという思いの方が強くなった。

 改めて言うまでもないが、貴乃花親方は現役時代に22回の優勝を果たした大横綱であり、引退後は貴景勝、貴ノ岩、貴源治などの弟子を関取の地位まで育て上げた親方である。このような肩書・実績共に抜群の人物が在野で指導をすれば、子供たちのレベルは確実に底上げされ、必然的に角界の門を叩く人材も増えることは想像に難くない。

 また、仮に入門まではいかなくとも、その後一裏方、一記者、そして一ファンとなる子も当然出てくるだろう。相撲の素晴らしさを教わった“門下生”たちが様々な形で相撲に携わることは、角界を下支えする豊かな土壌の形成に繋がり、その後の未来を明るく照らすことにもなるのだ。

 今回の一件により、確かに貴乃花部屋の歴史には終止符が打たれた。しかし、長い目で見れば、これを“新貴乃花部屋”の部屋開きと位置づけることもできるだろう。“不撓不屈”の精神を持った貴乃花親方が、前述の言葉通りに子供たちをよりよい未来に導いてくれることを大いに期待したい。

文 / 柴田雅人

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