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王と長嶋〜プロ野球を国民スポーツにした2人の功労者〜(12) “頼りになる長男”へと成長した一茂氏

 「選手の時にはいくら飲んでもグラウンドで答えを出せば良かったが、監督はそうはいかない。きょうのオーダーをどうするか、投手リレーは…とか、考えること、やることはいくらでもある。だから二日酔いで球場に行くわけにはいかないだろう。ビールをジョッキ3杯までと決めているんだよ。そう言いながら劇的な勝ち方をした時などついつい飲み過ぎてしまうこともあるが、そうした翌日はナイターでも昼前に球場へ行き、ウエートトレーニング場で汗とともにアルコールを流すんだ」
 お酒でも文句なしの3割打者の王さんは、持ち前の忍耐力であえて2割打者に甘んじるようにしているのだ。「ウイスキーのようなアルコール度の高いお酒は極力飲まないようにしないとね。筋肉に良くないからね。野球選手は体が資本だから」と、現役時代とはひょう変している。

 3月2日、都内ホテルで行われた新人研修会に講師として出席した王さんは、「先輩プロ野球選手からプロ野球の後輩へ」と題して、熱弁をふるっている。
 現役時代から顔なじみの元ニッポン放送アナウンサー・深沢弘氏のインタビュー形式だっただけに、大いに盛り上がった。「女遊びもお酒を飲むのもいい。たばこを吸うのもね。何事も経験だから。その上でやめるかどうか自分で判断すればいい」と自主性尊重を口にしながらも、お酒に関しては条件付き。
 「お酒はウイスキーとか度数の強いアルコールはなるべく飲まない方がいいね。筋肉に良くないから」と持論を強調した。
 監督時代は独自の期間限定の禁酒も続けていた。「キャンプは1年に1回、地元の人とのお付き合いもあるから、飲まないわけにはいかないことがある。だからオープン戦の期間、1カ月間を禁酒にする。開幕した後に勝っておいしいお酒を飲みたいからね」という王さんらしい理由で、意思の強さを貫き、オープン戦期間中は禁酒を続けていた。
 3年前に胃の全摘出という全く予期せぬアクシデントに見舞われたが、退院後はすぐにビールを飲んでいる。「お医者さんが飲んでもいいと言っていたからね。ただし飲むのは自分の部屋にしなさいと言われた。外で飲むと、急激にアルコールが効いて倒れるといけないからと注意された」。
 ビール党を任じている王さんは、あくまでビールにこだわっている。「体のことを考えたら、ワインの方が良いといわれている。でも、ワインよりビールが好きだから、どうしてもビールになってしまうんだよね」
 無理にお酒をやめることはしない。あくまで飲み過ぎ厳禁、節酒というのが、王さんのスタンスだ。酒豪の王VS下戸の長嶋という好対照は、現役時代のもので、監督になってからは意外にも様変わりしているのだ。

 ONの対比で興味深いのは、子育てだった。「放任主義の長嶋」VS「厳格主義の王」というのは、想像通りだろうが、共に今、子供たちに支えられている。
 長男・一茂氏が巨人軍代表特別補佐として、長嶋専務取締役・終身名誉監督をサポートしている。田園調布のおぼっちゃま君と揶揄(やゆ)された現役時代と違って、長嶋さんが病に倒れ、リハビリに励み、驚異的な復活ぶりを見せるまで、一茂氏は頼りになる長男として、長嶋さんの代弁、代役を立派にこなした。
 「たいしたものだ。見直した」と世間のイメージは一変している。

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