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前代未聞10・29後楽園大会前日中止 ハッスル消滅危機

 プロレス界に衝撃が走った。ハッスルが28日、緊急会見を開き、きょう29日に開催される予定だった後楽園ホール大会の中止を発表した。翌日に控えた大会を前日に取りやめるのは前代未聞の出来事。さらに、ハッスルエンターテインメントの山口日昇社長は会見で11・26&12・24後楽園、11・29名古屋大会の3大会の中止も発表。12・25両国大会から「新体制で再スタートを切る」としたが、本紙の取材では、ハッスルが消滅の危機に瀕していることが判明した。

 29日の後楽園大会をはじめ、年内4大会を中止する理由について、山口社長は「金銭的な部分が一番大きい。今後は両国大会一本に絞り、新体制に向けた土壌作りに集中したい」と明かした。ただ、ハッスルの経営難はいま、始まったことではない。今年に入り身売りの噂が出たほどだ。その問題は興行形態にある。
 2004年からスタートしたハッスルは、既成のプロレスとは一線を画した、新しいスタイルに挑戦。闘いよりもエンターテインメント色を前面に押し出し、狂言師の和泉元彌、タレントのインリン・オブ・ジョイトイ、泰葉らが試合を行い話題を集めてきた。さらにHGをはじめとするお笑い芸人も多数出場しており、有名人や著名人を使えば、当然のことながら経費はかさむ。
 また、これまで月1度か2度開かれる大会は、どれもメガイベント方式で、アメリカ・メジャー団体のWWEを参考にした派手な演出に経費がかかりすぎた側面もある。
 7月26日の両国大会を最後に、高田モンスター軍を率いてハッスル軍と軍団抗争を繰り広げてきた高田総統がハッスルからフェードアウトしたのも、資金難が一番の要因といわれている。
 さらに、9月からは給料の遅配を受けてスタッフが激減し、事務所にはほとんど人がいない状況。未払いは選手にも及んでおり、一部の選手にはギャラは支払われているが、大多数の選手は何カ月も遅配が続いているという。関連業者への未納もある。
 特に金銭的にダメージが深かったのは、一時、地上波(テレ東)の深夜に放送されていたレギュラー番組。それが番組は放映権料をもらう形式ではなく、自分たちがお金を持ち出して放送をしてもらっていたという。
 これで客入りが良ければ少しは状況も違っていただろうが、かつてはチケットの入手が困難だった後楽園ホール大会も空席が目立つようになり、10月10日の両国大会に至っては、主催者発表は6910人ながら実数はその半分以下といわれている。大惨敗である。
 原因はマンネリに尽きよう。ストーリー展開が固定化された感のあった高田モンスター軍VSハッスル軍の抗争が終わり、新しくキングRIKI軍VSハッスル連合軍の抗争が始まったものの、内容は特に代わり栄えしていない。ファンが飽きてきているのは明らかだ。

 また、大手パチンコメーカーの京楽産業は「今でもメーンスポンサー」(山口社長)というが、これまで各大会のスクリーンに映し出される協賛枠に、必ず記載されていたその名前は、10日の両国大会で目にすることはなかった。両社には微妙な“距離”が感じられる。体制の変化も顕著で、同大会からスポンサーに加わったクォンタムジャンプジャパン株式会社の酒井正和代表が最高顧問(CEO)に就いている。
 しかし、緊急会見に出席予定だった酒井CEOは諸事情により姿を見せず、いきなり足並みが乱れた格好だ。ハッスルは12・25両国大会を新生ハッスルのスタートと位置付けるが、この窮地を乗り切れる保証はどこにもない。

◎ギリギリまで開催の道を模索
 神妙な面持ちで緊急会見を行った山口社長は、29日の後楽園大会に関して「ギリギリまで開催の道を模索していた」という。だが、その粘りが裏目となり、大会開催前日に中止を発表する異常事態となったことについて「不祥事だと思います。心よりお詫び申し上げます」と深々と頭を下げた。
 選手たちの反応については「一様に驚いている」と明かし、12・25両国大会は「基本的にいまリングに上がっている選手は、当然ハッスルの中でやっていただけるものと思っています。ただ状況を説明した上で、一緒にやっていける人とやっていきたい」とした。
 新体制に関しては酒井CEOと話し合いを進めており、山口社長としては11月の早い時期に発表したい意向で、「新しい会社としてスタートする可能性も否定はしません」と気になる発言もしている。
 さらに、「ファンが見たいものを提供するという原点に立ち返る」などとコメント。山口社長はなんとしてもハッスルを再生させたい考えだが、解決すべき問題は山積みである。

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