(28歳・人材派遣会社勤務)
A:アニサキスは寄生虫の一種の線虫で、幼虫のうちはサバやアジ、サンマなどの青魚やイカなどに寄生しています。寄生相手が生きているうちは内臓にいますが、死ぬと筋肉、つまり身の部分に移動します。
魚を食べて体内に入ったアニサキスが胃の粘膜を破って侵入すると、激痛を引き起こす場合があります。
厚生労働省によると、2018年の食中毒の報告総数は1330件。そのうち、アニサキスは468件で、2位の病原菌カンピロバクター、3位のノロウイルスを上回りました。アニサキスは、一昨年の230件から倍増しました。
しかし、アニサキスは人から人へ感染しないため、患者数は478人で、ノロウイルスやカンピロバクターを大きく下回っているとのことです。
●釣ったらすぐ内臓を取る
アニサキスが体内に入っても、多くの場合、症状が出ないし、出ても軽いといいます。実際、数は少ないのですが、これは届け出数なので氷山の一角にすぎないとみられています。国立感染症研究所は実際の患者数は、年間7000人と推測しています。
今回の報告は、原因になった魚のうち、カツオが去年よりも10倍増えたことも話題になりました。4月、5月に特に多かったといいます。
アニサキス症は近年増えています。冷蔵での移送や生食の増加、温暖化などが原因として考えられていますが、完全には分かっていません。
刺身で食べてはいけないわけではありません。しかし、十分注意するに越したことはないでしょう。アニサキスは、加熱または冷凍で死滅します。
自分で釣った場合は、釣ってすぐの時、アニサキスは内臓にいるので、内臓を取り除くとよいでしょう。
刺身で食べる場合は、身の部分を目でよく見て、アニサキスの有無を確かめましょう。付け加えると、小さく切ったり、よく噛んで食べたりすることも予防法になります。
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中原英臣氏(山野医療専門学校副校長)
東京慈恵会医科大学卒業。山梨医科大学助教授、新渡戸文化短期大学学長等を歴任。専門はウイルス学、衛生学。テレビ出演も多く、幅広い知識、深い見解を駆使した分かりやすい解説が好評。