「1社にしなくても、現在言われている飛ぶボール、飛ばないボールの基準を修正して一本化すれば、ボールを統一することはできるのではないか。さらに、やるにしても、一軍だけなのか、二軍もそうするのかといったような、様々な問題がある」とは、ある球団の代表者だ。もっと具体的に「メーカーと3年契約しているから、現実的に無理だ」という球団もあったという。
が、こういう様々な問題点は、前回の実行委員会の段階でわかっていたはずだ。何を今さらだろう。現に、球界関係者はこう断言していた。「コミッショナーがメーカーを1社にしたボールの統一化に熱心だが、そうすれば、最大手のM社に決まるだろう。が、他のメーカーは潰れてもいいのかということになる。独占禁止法の問題もあり、1社にするのは現実的に無理なんだ」と。
加藤良三コミッショナーが「メーカー1社に絞った、メジャー球に近いボールの統一」に強い意欲を示しているのは野球の国際化への対応策だ。「国際試合に対応するためにも、ボールを統一することが必要だ。ワールド・ベースボール・クラシックが行われるたびに、メジャーのボールが滑るとか、対応に戸惑うのでは困る。3連覇を目指すには今から準備しなくてはいけない」と、事あるごとに強調している。前回の実行委員会で「前向きに検討をする」という結論になったのは、コミッショナーの姿勢に押し切られた面もある。
が、M社以外のメーカーが当然のように猛反発して、今回のドタバタ劇になったのだ。それにしても、あまりにも見苦しい不実行委委員会の醜態ぶりだ。球界OBがその内幕を語る。
「かつて巨人が球界の盟主と言われた時には、実行委員会でもコミッショナー以上のリーダーシップを握っていた。『この議案に賛成してくれれば、ウチとのオープン戦を1試合増やすから』と言えば、パ・リーグの球団はすぐに飛びついた。オープン戦でも巨人戦はドル箱だったからね。が、今やテレビ局に背を向けられ、テレビマネーも期待できない巨人戦に何のメリットもない。だから12球団が勝手なことを主張しあうだけだ。何も決まらず、継続審議ばかりで、不実行委員会になる。巨人の地盤低下が一因になっているのは間違いない」。
残念ながら、会議は踊るが売りの不実行委員会が名実共に実行委員会になる日は来そうもない。