「現役の選手会長である鈴木大地(30)の退団はショックでしたが、フリーエージョント市場で美馬学(33)、福田秀平(30)を獲得しました。美馬、福田は他球団も狙っていたので、その争奪戦に勝ったのは大きい」(チーム関係者)
確かに、福田がロッテ入りを表明した直後、交渉を続けてきた中日が「トレードを考えなければ」と“追い詰められたようなコメント”も出していた。争奪戦を制し、チームの雰囲気も上々のようだが、この後が真の戦いである。人的補償のプロテクト名簿作りだ。
「美馬は人的補償の発生するBランク選手です。福田は発生しませんが、鈴木大地が楽天に行き、美馬が千葉ロッテに移籍することとなり、両球団は人的補償を巡って、すでに駆け引きを始めています」(スポーツ紙記者)
今さらだが、プロテクト名簿とはFA選手を獲得したチームが、旧在籍チームに対する“選手補填”のようなもの。28人までをプロテクトし、旧在籍チームはその名簿に記載されていない選手から引き抜くことができる。
千葉ロッテの名簿作成について、こんな冗談も飛び交っている。
「28人もいらない。名簿入りさせる28人を探すほうが大変」
選手層の厚いチームではないが…。
その名簿作成を巡る駆け引きは、FA交渉そのものよりもファンの関心が強い。昨年オフ、巨人は他球団のドラフト指名を辞退してまで入団した内海哲也、長野久義を引き抜かれ、ファンを騒然とさせた。
どうも、千葉ロッテも大きな代償を被りそうなのだ。
「楽天の本命は、涌井(秀章=33)のようです」(球界関係者)
涌井が「名簿漏れ」する可能性は少なくない。まず、涌井の推定年俸は2億2000万円(一部では2億円)。チームトップの高給取りだ。昨季の巨人の悲劇は別として、「高額年俸のベテランには手を出さない」という傾向もあり、「主力選手をあえて名簿から外して若手をガードする」作戦もある。
「17年オフ、海外FA権を行使して涌井はメジャーリーグに移籍しようとしましたが、失敗に終わりました。16年シーズンに10勝したのを最後に、2ケタ勝利から遠ざかっています。井口監督も、厳しい評価を下しています」(前出・スポーツ紙記者)
一方、楽天サイドだが、涌井を高く評価しているという。石井一久GMが西武で現役生活を終えており、その関係で若手時代の涌井も知っている。楽天からは「球種も豊富。ピッチングに対する考え方をちょっと変えれば」と、再生にも自信を見せていた。
「涌井はゴールデングラブ賞を4度も受賞した『チームの顔』ですよ。勝敗以外のところでの影響力が強い選手です。引き抜かれたとなると、チームの雰囲気も一変します」(前出・同)
巨人の二の舞を踏んでしまいそうだ。もっとも、千葉ロッテも、鈴木喪失による人的補償を楽天側に求めるつもり。「打てる外野手」を狙うそうだが、こんな情報も聞かれた。楽天は人的補償を求めようとし、最後に「誰もいらない」と言い返す、と…。屈辱以外の何物でない。今オフのFA補強を経て、両球団は因縁を深めつつある。
(スポーツライター・飯山満)