釣れた魚と旨い酒!日本全国釣り行脚
早いもので、今年も残すところ3カ月。日ごと秋が深まっておりますが、そういえば今年に入って一度も川釣りをしていなかった…。
ドブ川のウナギ釣りこそ何度か楽しんだものの、「渓流」「清流」という“川らしい”場所は完全スルー状態であることに今さら気がつきました…。
といっても、「永遠の初心者」を自称するワタクシが楽しむ川釣りですから、あくまで足場がよく、入釣のラクな場所限定の川釣りです。それでも、木々の緑に囲まれて、澄んだ流れの水辺で竿を出すというマイナスイオンたっぷりな釣りは、海釣りとまた違った魅力があるように思います。
ということで訪れたのは、JR花咲線(根室本線)の上尾幌駅近くを流れる尾幌川。よりによって今年初の川釣りは、北の大地・北海道が舞台となりました。
さて、目指す場所は駅近くの小河川なのですが、そもそもこの路線は1日の運行本数が7本という超ローカル線。当然、この川で竿を出す人は少なく、ウブな魚が残されているはず。ヤマメやイワナといった渓魚の類が楽しませてくれるはずです。多分。
期待を抱き、橋の袂から藪を掻き分けながら土手を下りて行きます。たどり着いた水辺は、鬱蒼とした木々に包まれ、聞こえるのはせせらぎの音のみ。素晴らしい雰囲気じゃないですかぁ
さっそくハリにミミズを付けた仕掛けを深そうな場所に投げ込み、魚が掛かるのを待ちます。海釣りで人気がある「チョイ投げ」という釣り方をそのまま渓流に持ち込んでおりますが、こんな大雑把なアプローチでもウブな魚が釣れてくれるでしょう。多分。
とは言え、大小の岩石が転がっている渓流ですから、ヘタに仕掛けを動かすのは禁物。軽く持った竿は極力動かさず、その場でジッと待ちます。
すると、ほどなくして「グリッグリグリッ!」という感触が、手元に伝わってきました。半信半疑でスタートしたため少々驚きましたが、すかさず竿を煽ります。エイッ!
ん…、アレ…? 軽〜く巻き寄せてきたハリには、半分になったエサが…。
★熊に怯えつつ蝦夷の渓を満喫
ハリ掛かりはしなかったものの、場所も釣り方もハズレではなさそう。再びエサを丁寧に付け、同じ深みに仕掛けを投じて待ちます。
「……グリッグリッ!」
やっぱりキター! でも、ここで慌ててはいけません。
「グリグリッ!」
再び訪れた、ひと際明確なアタリで軽く竿を煽ります。ようやく魚が掛かった感触が伝わり、そのまま巻き上げて無事に確保。掛かっていたのは20センチほどのエゾイワナでした。
北海道の道東ということを考えればお子様サイズですが、こんな釣り方でも釣れたことに嬉しくなりつつ丁寧にリリースし、次のポイントを目指します。
渓流釣りは、無数にあるポイントを「ここはどうか? 次のここはどうか?」とワクワクしながら探り歩いていくのが楽しいんですな。
ただ…秋の北海道の川原は「熊との遭遇」というリスクが…。
「熊は出会い頭が危険。遭遇しないように音を出して存在をアピールしながら動くべし!」というのが常識とされていますが、ワタクシ、熊除けの鈴もラジオも持っておりません。そこで「お〜い、たけしぃ〜、ひろしぃ〜」などと叫びながら釣り上がることにしました。
名案かと思いましたが、「たけし」「ひろし」という名前の熊がいた場合は、逆に近寄ってきてしまう可能性もあるので、諸刃の剣かもしれません(←)アホ。
ひとしきり叫びつつ、手近なめぼしいポイントを探りきりましたが、どのポイントでもエゾイワナがヒット。駅近&集落内という理由だけで適当に入った渓で、さらにこんな釣り方でも釣れてくれたことに、あらためて道東の魚影の濃さを感じたのでありました。
★蝦夷地の渓魚は小型でも激旨!
結局、釣れたエゾイワナは20センチ前後が中心。リリースしながらの釣りとなりましたが、ハリを飲み込んでしまった個体を2尾持ち帰ってまいりました。集落内ではあるものの、釧路湿原絡みの素晴らしい環境を流れる渓流のイワナですから、不味いわけがありません。
小型ということもあり、甘露煮として調理しましたが、クセは一切ナシ! しっとりとした渓魚らしい身質は香ばしさというか、この手の魚独特の旨味も強く感じられ非常〜に美味です。
可愛らしい小熊の陶器に入った本醸造酒『ポンエペレ(アイヌ語で小熊の意味)』の辛口な口当たりと甘露煮の相性もバッチリ!
首尾よく釣れた充実感と最高の食味に酔いしれ、満足度の高い晩酌でありました。
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三橋雅彦(みつはしまさひこ)子供の頃から釣り好きで“釣り一筋”の青春時代をすごす。当然の如く魚関係の仕事に就き、海釣り専門誌の常連筆者も務めたほどの釣りisマイライフな人。好色。