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「痛快!ビッグダディ」正念場! “波乱なし”で数字獲れず

 香川県小豆島を舞台にして、“大家族モノ”として人気を博しているテレビ朝日系列の「痛快!ビッグダディ」が、正念場を迎えたようだ。

 そのシリーズ第17弾後編が、10月6日土曜日(午後6時30分〜8時54分)に放送された。第17弾前編(9月29日)のテーマは、突然の「別居」だった。後編は別居してから1カ月で、ビッグダディ一家がどうなったかが見せ場。

 番組冒頭では、別居前に、主人公のビッグダディこと林下清志さん(47)と、その妻・美奈子さん(29)のファミリー全員で、静岡への家族旅行を兼ねて、2人の出会いの場所となった「接骨院よこやま」(愛知県豊田市)を訪れ、横山勇院長に別居の報告を行ったことを伝えた。番組を見て、離婚の心配をしていた横山院長の苦々しい表情が印象的であった。

 前編では別居に至った経緯説明があいまいで、視聴者の関心は「なぜ別居したのか?」「別居後、どうなったのか?」に尽きた。しかし、放送では、平凡な日常が淡々と垂れ流されただけで、別居の真相は分からずじまい。美奈子さんが「見返して、また一緒に暮らしたい」と涙を流すシーンも見られたが、視聴者的には別居の理由がよく把握できていないだけに、共感もしがたいものだ。

 別居すれば、当然家計も二重になる。映像で見る限り、ビッグダディが経営する「島の接骨院」に多くの患者が来ているようには思えない。別居とともに接骨院の受付をやめて、無職の美奈子さんはビッグダディから生活費を受け取っているという。貧乏なはずのビッグダディ家のどこに、そんなカネがあるのか、不自然さはぬぐえない。

 後編はビッグダディより美奈子さんが主役で、その生活ぶりがクローズアップされた。ある日の夕食は、既製品のフライドポテトを油で揚げたものがメーンディッシュ。あとは梅干しとレトルトカレーという貧相なもの。番組では美奈子さんが調理師免許を取得したことが報告されたが、もともと料理が苦手な美奈子さんが、なぜ調理師を目指すのか分からずじまい。
 調理師免許を取得するには飲食店での実務経験が必要だが、いったいいつ実務経験があったのか? 美奈子さんは「接骨院よこやま」で介護の仕事をしていたはずだが、そちらの経験を生かした方がいいのではないか? といった疑問も次々に起きてくる。

 美奈子さんは「調理師免許を生かして暴れたい」と、自立を宣言。番組のエンディングではホテルに面接に行くシーンが流されたが、その結果は厳しいものだったようだ。

 現在の同番組は、美奈子さんの影響が大きいという。美奈子さんはこれまでの「ケンカ早くて、家事が苦手」といったイメージを払しょくして、良妻賢母を演出したい意図が見え隠れする。

 新シリーズとなってからの同番組の視聴率が高かったのは、激しい夫婦ゲンカなどの“波乱”があったからであるのは明白。何の波乱もない平凡な日常を放送しても、番組としてはおもしろいわけがない。ましてや、視聴者はあくまでもビッグダディを見たいのであって、美奈子さんを見たいわけではなく、このままの構成では番組の先行きに不安が残る。

 現実的に、後編第2部(午後7時〜8時54分)の視聴率(ビデオリサーチ調べ、関東地区)は12.9%(第1部=午後6時30分〜7時=非公表)と伸び悩み、前編の14.3%を下回った。前編は「別居ネタ」で引っ張れたが、波乱が起きない後編では視聴者を引き付けられなかったのは明らか。

 裏でガチンコ勝負となった“ライバル番組”「めちゃ2イケてるッ!16周年だヨ!全員集合初心に戻れスペシャル」(フジテレビ系列)の視聴率は第1部(午後6時30分〜7時)=9.8%、第2部(午後7時〜8時54分)=13.1%で、わずかながら同番組を上回った。

 テレビ番組である以上、数字が獲れなければ打ち切りとなってしまう。今後も美奈子さんの意向に沿った番組構成を続ければ、視聴率が上がらず、番組自体の存続が懸念される。かといって、素人のドキュメントだけに、局側の都合ばかりを押し付けるわけにもいかないだろう。制作側としては、非常に頭が痛いに違いない。
(坂本太郎)

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