来年の1月末、初場所後に、次の2年間のリーダーを決める役員選挙(理事10人、副理事3人)が行われる。大相撲界の選挙と言えば、5つある一門ごとに所属する親方たちが集まって厳しい事前調整で立候補者が絞り込まれ、無投票となるのが通例。しかし、今年は4期8年ぶりに定員オーバーとなり、選挙にもつれこみそうな気配なのだ。その混戦を演出しているのが引退して6年目、“平成の大横綱”と称号を奉られている貴乃花親方(37)だ。
実父の先代二子山(元大関貴ノ花)が理事、伯父の元二子山(元横綱初代若乃花)が理事長だったこともあって、貴乃花親方の理事へのこだわりや、協会改革の思いは強い。
先代二子山が亡くなった直後の平成17年には、テレビのワイドショーなどに出演し、力士の学校設立などの大胆な協会改革案を披露。これが協会首脳の怒りを買い、「そういうことを言うような立場じゃない」と大目玉を食う騒ぎまで引き起こしている。
貴乃花親方の理事選出馬は一朝一夕の思いつきではないのだが、出る杭は打たれるのたとえ通り、この旧態依然とした世界で若くしてリーダーの仲間入りを果たすのは容易なことではない。悲願の理事当選を果たすに最低でも10票、つまり、自分以外に9人の親方たちの支持が必要。貴乃花親方は若い親方たちを糾合し、票固めをしているが、その前に思いがけない対抗馬が出現、苦戦を強いられている。
横綱の先輩で、稀勢の里や若の里らを育て、弟子の育成でも実績を残している鳴戸親方(元横綱隆の里)が理事選に名乗りをあげたのだ。
こちらのバックには、弟子の不始末で降格処分を食ったが、一門内ではいまだに隠然たる勢力を誇る間垣親方(元横綱2代目若乃花)が付いていると言われる。
4日目の打ちだし後に開かれた二所一門会では両者ともに出馬の意向を示し、このままでは選挙による決着が必至。貴乃花親方はどうやって活路を見出すのだろうか。