(66歳・無職)
A:高齢になると、食事中にむせたり、ツバを飲み込んでゲホゲホと咳き込んだりすることが珍しくありません。これは、飲み物や食べ物、唾液が食道に入らず、呼吸のための気道に流れ込む(誤嚥)からです。
誤嚥は窒息が危険ですが、高齢の人にとって怖いのは気道に流れ込んだ食べ物や唾液で炎症が起こることによって発症する誤嚥性肺炎です。
誤嚥の大きな原因は、舌力の低下です。舌の力が弱くなっていると、食べたものを喉へと送り込む力や飲み込む力も低下しており、誤嚥のリスクがぐんと高まります。
年をとると全身の筋力が低下しますが、舌も筋肉でできており、舌筋力も低下するのです。首回りの筋肉も一緒に衰えると、よくむせるようになるし、誤嚥性肺炎の発症にもつながります。
●舌と喉の筋肉を鍛えよう
ですから、誤嚥を防止するには、舌の力を強くすればよいのです。舌を鍛えると、口腔内の筋力も、喉の筋肉も鍛えられます。すると、飲み込みやすい形状になった食べ物(食塊)がしっかりと喉へ送り込まれ、正しく食道へ進むのです。
舌の筋肉を鍛え、喉の筋肉も強化し、誤嚥を防止するための方法として私が勧めているのが「舌(ベロ)トレ」です。これは「改良版あいうべ体操」で、次のような手順で行います。
(1)「あー」と、口を大きく開く。1秒
(2)「いー」と、口を横に大きく開く。1秒
(3)「うー」と、口を強く前に出す。1秒
(4)「べー」と、思い切り舌を出し、下に伸ばすのを3回くり返す。「べー」1回につき1秒。
舌は握力や全身の筋力と密接なつながりがあることが分かっています。握力の低下と寿命も密接に関係しています。老化による筋肉の低下を防ぐためにも、まずは鍛えやすい舌をトレーニングしてみてはいかがでしょうか。
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今井一彰氏(みらいクリニック院長)
山口大学医学部卒業。東洋医学などさまざまな医療を駆使し、薬を使わずに体を治していくという独自の観点に立って治療を行う。日本初の靴下外来も設置。