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シンクロデュエット日本人指導者因縁対決 今夜決着

 因縁対決の第一幕が今夜、決着する。シンクロのデュエットで選手の演技とともに注目を集めている、日本と中国の日本人指導者バトル。かつて日本のシンクロ界を二人三脚でリードしてきた2人は、7大会連続のメダル死守と初の表彰台を目指してプールサイドでしのぎを削っている。

 鈴木絵美子(26)、原田早穂(25=ともにミキハウス)のペアは、フリールーティン(FR)の見せ場である最後の演技、ラスト20秒近く潜ったままの足技を見事にこなした。鈴木は「出だしのリフトがすごくうまくできたので、力になった」と笑顔で言う。原田は最後の足技を「しんどかったけど、気持ちで動かした」と振り返った。
 中国ペアの蒋●(=女へんに亭)●(=女へんに亭)と蒋文文は、孔雀が羽根をいっぱいに広げた姿を水面に描き出した。21歳の双子ペアは、スレンダーな肢体と脚線美をアピールした。
 2組のFRの得点は、同点の48.500。前日のテクニカルルーティン(TR)で、日本ペアが中国ペアにつけた0.166点の差は縮まらないまま。日本3位、中国4位で今夜の決勝を迎えることになる。
 日本の金子正子チームリーダー(64)は「狙い通りの位置をキープできた。このまま、(中国組に)リードを保てばいい」と安どの表情を浮かべた。追う立場の中国組の井村雅代ヘッドコーチ(58)は「あんなものかな」と冷静だった。
 独走するロシア組に、2位をキープしたスペイン組は、日中の指導者には眼中にない。
 眼下の敵をほうむるか、手を伸ばせば届きそうなところにいる目標を引きずり下ろすか、それだけだ。
 1984年のロサンゼルス五輪でシンクロが正式種目になってから、日本チームを指導してきたのが金子氏と井村氏。それ以来、アテネ五輪まで6大会、全種目でメダルを取る功績を残した。
 五輪でメダルが確実に計算できる種目にした2人は、その手腕を高く評価される。次第に役割は別れ、金子氏は日本水泳連盟のシンクロ委員長に就き、井村氏は指導者として現場を任されることになる。日本水連の関係者がこう証言する。
 「性格が正反対の2人は、いいコンビでした。はっきり物を言う井村氏を金子氏がカバーしていました」
 1980年台から90年代に、日本チームは静岡・修善寺でよく合宿していた。コーチの2人は同室になり、寝食をともにする。
 「金子氏が『果物、食べる?』と聞くと、井村氏は『(皮を)むいてくれたら』と言ったそうです」(前出・水連関係者)
 井村氏は「金子先生とは、私とあらゆることが違う」と述懐。金子氏は井村氏を評して「組織の中で生きていける人ではない」と言う。井村氏が、組織が優先する日本にあきたらなくなる日が来ることを、金子氏は分かっていたのかもしれない。
 2006年に金子氏の“予言”は的中する。北京五輪の強化に奔走する中国からのオファーを井村氏は受ける。
 「とんでもないこと」と金子氏は引き留めるが、井村氏の心はすでに中国に飛んでいた。
 「日本のコーチ力が認められた証しです」
 そう言って、1日12時間にも及ぶスパルタ練習を課し、選手をメダル争いに加われるまでに鍛えた。
 「井村氏は、国がどうこうより指導者として純粋に選手を育ててみたかったのではないか。日本人には少ない、手足の長いシンクロ向きの素材がゴロゴロしているのが中国。はっきり物を言っても、しこりが残らない国民性も井村氏には合っている。日本どころかスペイン、ロシアを抜こうとしているかもしれない」(スポーツ紙デスク)
 目標はと問われて「ロシア」と答えてもいる井村氏。
 シンクロの勝負師は日中対決第一幕よりはるか先を見ているのか。

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