問題となったのは、11月7日に放送された第4話「バクハン」に登場した覚せい剤中毒の女性、通称「シャブ山シャブ子」の描写で、ドラマでは電話をしている刑事に忍び寄り、手に握ったハンマーで殺害し高笑いする姿が「差別的」「前時代的」と問題となったようだ。
現在、シャブ山シャブ子の登場した第4話の再放送や今後については不明だが、演出が問題となった以上、再放送やDVD化などについてはソフトな表現などに改めるなどの処置が必要ではないかと思われる。
さて、今回の「シャブ山シャブ子騒動」で思い出されるのが、『ウルトラマン』などでお馴染みの円谷プロが制作した特撮ドラマ『怪奇大作戦』(1968年〜1969年、TBS系)の放送禁止事件である。
本作『怪奇大作戦』はウルトラマンなど巨大ヒーローが登場しない大人向けの本格SFドラマとして制作されたのだが、全26話のうち第24話『狂鬼人間』が今はソフト化すら許されない「封印作品」となっている。
『狂鬼人間』が封印された原因に関しては諸説あるが、本エピソードでは「心神喪失者は殺人を犯しても罰せられない」という法律をついた作品で、ドラマでは「狂わせ屋」を名乗る科学者が開発した「脳波変調機」によって、精神異常になる人物が多く登場する。
一説によると「狂わせ屋」という名称のほか、精神障害者が善悪の判断がつかず殺人を行う描写などが前時代的すぎたとし、1995年に発売されたLD-BOXがリリースと同時に回収されたほか、以降に発売されたDVDでも『狂鬼人間』の収録が見合わせられるなどしている。
なお、『狂鬼人間』は放送当時、24.7%の高視聴率(ビデオリサーチ調べ、関東地区)を記録しており、実際に放送を観て「トラウマになった」と語る視聴者は多かったという。
文:穂積昭雪(山口敏太郎事務所)