百貨店やスーパーが実施するセールの売り上げの他、クライマックスシリーズ(CS)、日本シリーズの入場料や関連グッズの売り上げ増も含め、消費の増加額を計129億1000万円。これに加え、関連産業の生産や従業員の所得が伸びる効果を見込んでいる。
「中日の日本一は先行き不透明な中部経済に明るい話題で消費マインドに火を付けるだろう」と共同総合研究所は締めくくっている。が、この中日の3年ぶりの日本一経済効果215億円1000万円の試算は、4年ぶりのリーグ優勝、CSファイナルステージで阪神を3勝2敗で撃破、日本シリーズでは西武に4勝3敗で勝利が前提だ。いわば、最大限のケースの経済効果を考えてのものだが、中部経済界にとっては、明るい話題であることは間違いない。
ところが、プロ野球界にとっては、中日の優勝、日本一は最悪の事態になる。「全国区人気の巨人か阪神が日本シリーズに出てくれれば、何の問題もないが、名古屋ローカルの中日となると、頭が痛い」と、頭を抱える球界関係者が大半だ。
最大の頭痛の種は、テレビ局の日本シリーズ全国中継の消滅危機だ。「日本シリーズのカード次第では、史上初めてテレビの地上波全国中継がなくなってしまうのでは…」と、主催の社団法人・日本野球機構(NPB)関係者は戦々恐々としている。それも無理はない。
今やプロ野球は地上波のテレビ局から見放され、CS放送やBS放送で見る物というのが、世の中の常識になってしまっている。NPBにとって日本シリーズと並ぶ、二大財源になっていたオールスターは、一足先に中継消滅の危機に直面して放映権が大暴落している。過去には1試合1億円以上だったのに、昨年は8000万円、今年についにその半値の4000万円にまで下落しているのだ。その理由もお寒い限りだ。「オールスターのテレビ中継なしという、史上初の最悪のケースだけはなんとしても回避したい」というNPB側が、2試合セットで約8000万円というパック料金でテレビ朝日系列に売っている。
最短でも4試合、最長ならば7試合は開催される日本シリーズの財源的な重要性は、オールスターの比ではない。巨人が日本ハムを4勝2敗で破り、7年ぶりに日本一になった昨年の日本シリーズの放送収入の合計は、6億1504万650円。内訳はテレビが5億6700万円で、ラジオは4804万650円だった。
最悪4試合でも合計4億円になる莫大な放映権料が完全に消えてしまったら、財政難のNPBは真っ青だ。戦々恐々とするのは当然だろう。中部経済界が中日の日本一経済効果215億円1000万円の試算に胸をふくらませているのと対照的に、球界関係者は「頑張れ阪神」「頑張れ巨人」と必死のエールを送っているのだ。