しかし、食事をしたり、字を書いたり、コップを持っているときなど、何でもないような場面で手が震え、日常生活に影響が出るような場合は、何か別の病気が背後にある可能性があります。
手の震えは、整形外科の病気ではほとんど見られない症状です。病気としては本態性態度の他に、パーキンソン病や甲状腺機能亢進症(バセドウ病)などがあります。まずは神経内科や内分泌内科を受診してください。内科的な病気がない時は、心療内科を受診してみましょう。
手の震えを起こす病気の中で、特に覚えておいたほうがいいのが、パーキンソン病です。脳内のドーパミン作動性神経細胞に障害が生じて、手足の安静時の震えや筋肉の硬直、動作の鈍化、前のめりの小刻み歩行などの症状が現れます。ただし、昔は「発症すると10年後には寝たきりになる」と言われていましたが、現在は効果的な治療薬もあるので、治療が早ければ早いほど、大きな支障もなく生活することができます。
いずれにせよ、いつもと違う手の震えを感じたら、まずは病院を受診してみてください。
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監修/井尻慎一郎先生
井尻整形外科院長。医学博士。著書・監修書に『痛いところから分かる 骨・関節・神経の逆引診断事典』(創元社)、『筋肉のからくり 動かし方を変えるだけでコリと激痛が消える!』(宝島社)などがあるほか、論文、講演、テレビ出演などで活躍中。井尻整形外科HPはhttps://ijiri.jp