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特選映画情報『積むさおり』〜男優と女優2人だけで展開する“夫婦崩壊”短編ムービー!

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提供:週刊実話

配給/松竹 新宿K’s cinemaほかにて公開
監督/梅沢壮一
出演/黒沢あすか、木村圭作

 地味ではあるが、確かな演技力の実力派熟美女優・黒沢あすかは、ご贔屓の1人。『六月の蛇』(02年)が圧倒的で、『サンクチュアリ』(05年)の悪女も最高で、『冷たい熱帯魚』(10年)では殺人鬼の妻を演じ、ヨコハマ映画祭助演女優賞を獲得、17年には世界的巨匠マーチン・スコセッシ監督の『沈黙〜サイレンス』で主人公の妻を演じたほど。これまで悪女イメージ強めだっただけに、彼女いわく「今回は普通の女性を演じる愉しみを味わった」そうだが、一筋縄ではいかないのは“黒沢映画(この場合、黒沢あすか出演作)”の特徴だ。

 結婚5年目を迎えるバツイチ同士の夫婦、さおり(黒沢あすか)と慶介(木村圭作)。ある日、さおりが愛犬と散歩に出掛けると、積み枝の前に見たこともない穴を見つける。やがて、一陣の風が吹き、音が吸い込まれるような不思議な体験をする。それ以来、彼女には耳鳴りも起こり、夫が筋トレや食事の最中に発する些細な音にも敏感になってゆく…。

 登場人物は、ほぼこの主演男女優2人のみ。上映時間も40分ぽっきり延長ナシという異色ぶり。偶然見つけた“穴”が、夫婦間の落とし穴の象徴のように存在感を増してゆく、という一種のホラー映画調で描いているが、夫の出す音すべてが次第に不快になってゆく妻、というのは“夫婦あるある”だろう。夫が自己愛、自己チュー強めだと余計にそういう傾向になってゆくようだ。今回、筋トレに夢中の夫、という設定に説得力あるなあ。これまでエキセントリックな役柄が多かった黒沢サマだが、今回は押さえて押さえて、耐えて耐えて、怒りをずっと溜めてゆくキャラクターなのが新鮮だった。

 さあ、どこで爆発するのか、キレるのか、戦々恐々としながら見ていた。言い換えれば、これは“中年クライシス”の映画、と痛感した次第。自分を振り返っても、40代のころが夫婦で一番ギクシャクしていたような気がする。原因は、そりゃほとんど私でしたけどね。

 40分では短過ぎるほど。何か足らないなあ、と思ったら“夫婦の営み”シーンだった。当然、アノときに亭主が発するさまざまな音、無神経な行為にイラつくこともあるだろうに。そういう“あるある”を約30分ぐらいブチ込んで1時間チョイにすれば、ロマンポルノやピンク映画の尺数になって丁度いい……と、つい余計なことを考えたりして。いずれにしても、小品ながら“特撮”も含めて凝った異色作に仕上がっていた。サクッと見ることができるのも長所だろう。
 《映画評論家・秋本鉄次》

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