ということで今回は、「一度でいいから釣りをやってみたい」と、かねてからお話をしていた友人を連れて、千葉県の小湊漁港へ出かけてみました。
今回訪れた小湊地区が位置する千葉県の東南岸は、黒潮の影響を強く受けることから狙える魚種が実に豊富。一応、狙いはアジなのですが、群れが回っていなくても何かしらは釣れるはずです。多分…。
港に到着すると、休日とあってか堤防は大賑わい。当初予定していた場所はもはやスペースが見当たりません。釣行は平日や夜が多く、しかも、場所は街中のドブ川や観光地のド真ん中、あるいは僻地の漁港ばかりなので、休日の人気釣り場の光景に慣れておりません。それゆえ「釣りって人気があるんだなぁ」と、今さらながら驚いてしまうのです。
さて、せっかくの休日に混雑の中へ割って入るのも窮屈ですし、ちょっと離れている堤防で竿を出すことにしました。こちらは適度に空いていますから、初心者も安心です。まずは寄せエサを撒いて寄ってくる魚の様子をうかがいますが、見えるのは10センチにも満たない極小のメジナばかり。人間に例えれば幼児といったところでしょうか。さすがにこのサイズでは、ヤル気が湧きません…。
★小さな雑魚も掛かれば楽し
それでもめげずにエサを撒いてみましたが、状況は変わらず。そこでアジ、イワシ狙いはいったん諦め、エサを付けたカワハギ用の2本バリ仕掛けに結び替え、堤防際を擦るようにして探り歩きます。堤壁には何かしらの魚が居着いている場合が多いので釣れるハズ…。
「コツコツッ!」
仕掛けを落としてすぐに反応がありました。これなら初心者でも楽しめそうな確信を得られたため、友人に竿を渡します。ハリ掛かりさせるのに多少苦戦していましたが、しばらくして何かを掛けたようです。友人にとって初の獲物となったのはニシキベラでした。
「ニシキ」の名の通り、青を基調とした派手なビジュアルは、完全に熱帯魚。関東以南の太平洋岸では、小磯や堤防周りでよく釣れる定番の小魚です。まあ初心者ですから、こんなヤツでも喜んでくれますが、普通の釣り人からはまず相手にされません。
ただ、ベラの類いは小さな口で巧みにエサをかじり取るため、百発百中とはいきません。
「明確なアタリが伝わるのに、なかなか掛からない」
このもどかしさゆえ、大のオトナでもついつい夢中になってしまうんですな。
釣りを嗜むうちに、大きさや魚種など狙いに偏りが生じるものですが、ニシキベラを相手に楽しんでいる友人の様子を見て「釣りの原点はこういう素朴な自然相手の遊びなんだなぁ」ということをあらためて感じました。まあ、ワタクシもガキの頃はダボハゼやベラ、川ではモツゴなんかが掛かるだけで、うれしかったですからねぇ。
結局、その後もアジやイワシの回遊は見られず、バケツにはド派手なニシキベラが数尾…。夏場の堤防でよく見かける「釣り初心者のバケツ」の典型例のような光景ですが、素朴な遊びですからこれでいいんです。
★見た目は奇抜も味はマトモ!
ニシキベラはその派手な見た目のせいか、ほとんどの釣り人が持ち帰らずリリースしてしまいます。しかし、見た目が派手なだけで毒を持っているわけでも、骨ばっているわけでもありません。実は味は悪くない魚ですから、持ち帰って晩酌の肴にすることにします。釣った魚を美味しく食べることも釣りの原点ですからね。
煮付けるには少々大きさが足りないので、天ぷらでいただくことにしたのですが…、衣の下に青色が透けて見える、なんともエキセントリックな天ぷらとなりました。ただ、見た目とは裏腹に白身魚の旨味も感じられ、ビールの肴には全然アリ! というか、美味ですよ、奥さん!
「これなら、天ぷら用にニシキベラを専門に狙って出かけるのもアリかなぁ」
ほろ酔い状態でそんなことを考えていたら、アッという間に完食。本当に出かけるかは…、未定です。
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三橋雅彦(みつはしまさひこ)子供の頃から釣り好きで“釣り一筋”の青春時代をすごす。当然の如く魚関係の仕事に就き、海釣り専門誌の常連筆者も務めたほどの釣りisマイライフな人。好色。