2006年のWBC決勝で日本に負けてから、チーム改革に取り組んだのは、野村ID野球の申し子であるオレステス・キンデラン打撃コーチとアントニオ・パチェコ監督。野村克也現楽天監督が、社会人野球のシダックス監督に就任した2002年、元キューバ代表経験者で当時38歳とピークのすぎたキンデランとパチェコがシダックスに入団し、“野村再生工場”で復活。かつてキューバの大砲だったキンデランは主軸4番をまかされた。2人は日本野球をよく理解しており、同時に野村ID野球の神髄をみっちりと教え込まれている。
日本野球の長所・短所を知る2人が北京ではキューバチームの頭脳となっており、これまでのぶんぶん振り回すだけの大味なチームカラーはガラリと変わった。
1番のヒオルビス・ドゥベルヒル中堅手(28)は、左打ちの俊足好打で“キューバのイチロー”と評される頼れるリードオフマン。2番には打率4割を超えるミチェル・エンリケス三塁手(29)と続き、チームの核でキューバの国民的英雄であるグリエルにつなげる。4番アレクサンデル・マジェタ一塁手(31)、5番DHのフレデリク・セぺダ選手(28)はともにキューバ特有のプルヒッターで、腕力では今五輪屈指だ。
下位打線にももちろん一発があり、相手投手は常に緊張を強いられる。足を使って打席に集中させず、自慢の打棒をさらにパワーアップさせる戦略的攻撃陣。しいて弱点をあげるとすれば、球速はあるものの出来にムラのある投手陣か。