4月26日のカープ戦、FA加入の大和がスタメンから外れた。去年のオフ、ラミレス監督は大和を獲得したことで「最後のピースを手に入れた」と語り、その守備力と走力、バントなどの小技で去年出来なかった、スモールベースボール実現のキーマンとして期待していた。去年の不動のリードオフマン・桑原将志の定位置を開幕3戦目に剥奪したのに続き、開幕一か月を待たず、大ナタを振るった。
桑原は昨年終盤から、今年のオープン戦にかけても調子が戻らず、シーズンインして僅か2試合で見切られてしまった。大和もなかなか調子が上向かず、シーズン途中からスイッチヒッターを止め、右一本で挑むなど試行錯誤したが、打率は.205に留まっている。(25日現在) 自慢の守備でも、難しい打球のさばきこそ流石のプレーを見せるが、簡単なゴロを弾くなど精彩を欠いていた。25日も併殺を取れる場面でミスを犯し、目に見えないエラーもあった。
昨年フルイニング出場の倉本寿彦も4月4日に代走を送られ、あっさりと記録は途切れた。その後も代打を送られる場面も見受けられる。いずれも去年は考えられなかった采配である。
☆増した選手層の厚み
その「聖域」を打ち破ったのは、神里和毅、宮本秀明のルーキーコンビ。神里は積極的なバッティングと俊足で、絶賛売り出し中のイケメン。開幕当初はケガで出遅れていた梶谷隆幸の代わりとみられていたが、今では1番バッターとしての地位を確保している。宮本はピンチランナーとして、ここぞの場面で盗塁を決めチームに貢献していたが、打撃でも25日に初ヒットが初ホームランとなる活躍。26日にもホームランを放ち、足だけではないところもアピールした。「まさかこんなに早くスタメンが…」と本人もビックリしていたが、しっかりと結果を出した。
梶谷復帰前のライトのスタメンには、同じくルーキーの楠本泰史や、乙坂智も名を連ねた。復帰した梶谷も背中のケガは万全でなく、神里の調子が落ちてきたとき、筒香のレフト以外の2つのポジションは、今後も激戦になりそうだ。選手層が厚くなってきたことで、チーム内に競争原理が働いてきた。
☆静から動へ
今年は開幕から積極的に動くラミレス采配。終盤戦には宮崎敏郎を下げ、サードに倉本、セカンドに柴田竜拓を入れる守備固めや、代走での宮本起用も、今年の采配の特徴。
去年までは動かず、己の信じた選手と心中するかのような采配であった。レギュラープレーヤーは、不調でも代えられない為、安心感を持てる。反面バックアッププレーヤーは、モチベーションキープが難しい。賛否両論の「ラミレスタイル」だが、日本シリーズまで進出し、結果を出した采配だったことは間違いない。
知将は去年のスタイルを迷いなく変えた。フルモデルチェンジした采配で、背番号と同じ80勝を狙う。結果は秋に出る。
取材・文 ・ 写真/ 萩原孝弘