とはいえ、やったことといえば、カニ網投入→放置して宿で温泉満喫→ほぐれまくって布団で熟睡→朝に飛び起きて網上げ→捕獲! という、極めてぐうたらな一連…。これじゃあ、ただの慰安旅行じゃねえか!?
まあ、実際、その通りなのですけど、せっかく伊豆下田まで来たわけですから、釣りをせずにはもったいない! ということで、下田湾の最奥部に位置する『まどが浜海遊公園』で、シロギスなぞを狙うことにします。
広々とした園内には、芝生広場やベンチ、果ては足湯まであり、水辺には安全柵も完備。のんびり竿を出すには、絶好のロケーションといえる釣り場なんです。
平日の早朝とあって、園内には釣り人ではなく散歩を楽しむ近所の方が数名といったところ。適当な場所に陣取り、沖に向かって仕掛けを投入。後はベンチに腰掛けて、魚が掛かるのを待ちます。
それにしても、海辺ですごす朝は気持ちがいいもので、視界の両サイドには初夏の新緑が眩しい須崎半島と下田公園の山々。江戸の頃より風待ち港として栄えた下田湾の美景を眺めるうちに、「別に釣れなくてもいいじゃないか。今、このひと時を楽しもうや」と、すっかりのんびりモードに。なんせ慰安旅行ですからねぇ。
★のんびり待ちで良型が続々!
ベンチに背を預けてのんびり竿を眺めていると、柵に立てかけていた竿のうちの1本が「ブルルルンッ!」と勢いよく震えました。あまりの勢いに一瞬、竿尻が浮き上がるほど。慌てて竿の元に駆け寄って竿を取り、巻き上げにかかります。
「キュンキュン!」という手応えに安心しつつ、断続的に伝わる鋭角的な引きを楽しみます。やがて水面下には白く輝く魚影が見えてきました。手にしたのは25センチほどの良型本命! 丸々と肥えていて実に旨そうな魚体です。
釣り人からは“渚の女王”と呼ばれるように、シロギスは砂地に生息する魚です。ただ、岩場や藻場が近い場所では型のよい個体が釣れる傾向があり、特に産卵を間近に控えた初夏にはそれが顕著です。
深場で冬を越したシロギスは、水温の上昇とともに浅場に移動を始め、梅雨時から晩夏の産卵期に向け積極的にエサを漁ります。ただ、真夏を迎えて水温が上がりすぎると釣れる魚は小さくなります。これは、高すぎる水温が産卵活動に適していないためで、産卵行動に入ったアダルトたちは釣れなくなるわけです。
まぁ、人間もシロギスも同じで、大人はすごしやすい室内とか物陰でチョメチョメしたい、ということなんですな。
その後ものんびりと景色と竿とを眺めていると、飽きない程度に竿先が「ブルルルッ!」と絞り込まれ、掛かる魚はいずれも20センチクラスと良型ぞろいです。数釣りとまではいきませんが、食べるには十分な量を確保。満足して竿を仕舞い、下田の街中を散策して旅を締めくくりました。
★初夏の良型を贅沢にナマで
「シロギス料理=天ぷら」
一般的にはこのイメージが強いことでしょう。確かに淡白なキス天は非常に美味であり、ワタクシも大好き。ただ、今回はせっかくの良型ぞろいなので、刺身&炙りで楽しむことにしました。釣果の半分をお刺身で、半分を炙りにして贅沢な晩酌の始まり始まり〜♪ まずは炙りから。皮目の上品な脂に香ばしさが相まって予想どおりの美味しさです。
続いて刺身へ箸を伸ばします。これがもう…。もう一枚上手の味わいでした。白身魚らしい淡白さの土台の上にほんのりと脂が乗り、上品な甘さも感じられます。
「シロギスの刺身ってこんなに旨かったっけ?」
思わず驚いてしまいましたが、そういえば型のよいシロギスは高級な鮨屋からの引き合いも多く、市場でも総じて高値傾向です。
改めてその美味しさに驚きつつ、伊豆産のニューサマーオレンジを使った新夏蜜柑酎『うめぇら』をグビリ。これまた夏らしく爽やかな飲み口で、ついつい杯が進んでしまいます。
柑橘の風味とシロギスの甘味がよく合い、釣りのみならず帰宅後の晩酌まで初夏の伊豆を堪能したのでありました。
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三橋雅彦(みつはしまさひこ)子供の頃から釣り好きで“釣り一筋”の青春時代をすごす。当然の如く魚関係の仕事に就き、海釣り専門誌の常連筆者も務めたほどの釣りisマイライフな人。好色。