互角の立ち合いから一進一退の攻防を経て、土俵際へ高安を押し込んだ逸ノ城。しかし、同時に高安もはたきを繰り出しており、両者土俵下へ落ちる中、軍配は大関へ。同体ではないかと物言いがついたものの、高安の足が残っていると判断されたため結果は覆らなかった。
千秋楽まで残り4日のこの段階で、早々に負け越しとなってしまった逸ノ城。小結貴景勝が既に勝ち越しを決めていることからも、来年初場所では関脇から陥落することが決定的。また、今回の敗戦は、今年の幕内では逸ノ城しか達成の可能性がなかった「年間6場所全て勝ち越し」という記録にも終止符を打つ痛恨の黒星となった。
前頭筆頭で臨んだ初場所で「10勝5敗」をマークした逸ノ城は、3月場所(小結)で「9勝6敗」、5月場所(関脇)で「8勝7敗」、7月場所(関脇)で「8勝7敗」、9月場所で「8勝7敗」とここまで5場所連続で勝ち越し。しかし、今年最後の場所である今場所で、とうとう今年初の負け越しを喫してしまった。
全場所勝ち越し力士が1人も輩出されなかったのは、2003年以来15年ぶりのこと。この年は7月場所終了時点でただ1人の有資格者となっていた若の里(元関脇)が9月場所も勝ち越して望みを繋げるも、「7勝7敗」で迎えた11月場所千秋楽で敗戦。最後の最後で記録が途絶えている。
ちなみに、2003年は年間で4人(朝青龍3回/千代大海1回/魁皇1回/栃東1回)の優勝者が誕生しているが、今年も9月場所までで既に4人(鶴竜2回/白鵬1回/栃ノ心1回/御嶽海1回)が賜杯を手にしている。初場所で貴乃花(元横綱)が引退した2003年は、翌2004年から朝青龍の黄金時代が到来するなど時代の転換点となった印象が強い年だが、今年もそういった意味合いを持つ年となるのだろうか。
文 / 柴田雅人