1万人の島民は火山弾により家を焼かれ、帰る場所を失った島民も多くいたが、地元職員の努力もあり、怪我人や死者をひとりも出さずに済んでいる。
噴火から約2週間後の11月末には、報道局のカメラが多数大島町へ入り、現地レポートを行ったのだが、中にはその報道姿勢が問題となった番組もあった。1986年の日本テレビのワイドショー『酒井広のうわさのスタジオ』は、NHKを退職し日テレの契約アナとなっていた酒井広および「突撃レポーター」として知られている梨元勝をメインにした番組で、この番組も大島への取材が解禁されると、すぐに三原山へ飛ぶことになった。
その際に『うわさのスタジオ』が特集したのは、『生きていて!!薫ジュンの老犬涙の救出大作戦』という企画。当時の新聞によると、歌手・薫ジュンの実家が大島にあり、島には彼女の家族の飼っている愛犬が置き去りになっていたのだ。
ヘリコプターで大島へ飛んだ梨元は薫の実家へ急行。無事に犬を保護し、避難している彼女の家族へ引き合わせることに成功した。
日本テレビではこの映像を「感動のドキュメント」として放送したが、この内容に都の災害対策本部および大島の住民からクレームが殺到。その内容は、「歌手を特別扱いするのか」「多くの島民が帰れずに耐えているのに犬を優先するとは何事だ」というもので、都の災害対策本部は放送局である日本テレビに対し厳重抗議を行った。
日本テレビは翌日の新聞にて「軽率な行動だった」と謝罪し、翌日の放送では謝罪を行っている。
文:穂積昭雪(山口敏太郎事務所)