「シーズン終了の報告は終始、和やかなムードでした。キナ臭い話は一切出ていません」(読売関係者の1人)
ところが、である。取材陣の質問が途切れるなり、同会長が突然、こうぶちまけた。
「(巨人の)コーチの人事とか、なんか盛んに書いてるね? あれ、誰に聞いて書くんだ? 俺は何にも報告を受けていない!」
“逆取材”された報道陣は「球団発表」である旨を伝えたが、同会長は「俺に報告ナシに勝手にコーチの人事やなんかをいじくるってのは。こんなことあり得るのかね!?」と、一気にまくし立てた。
「俺は知らん! 責任、持たんぞ!」
同会長は怒りが収まらなかった…。
奇しくも、同日の日中、巨人はOBでもある大道典嘉氏(42)の育成コーチ就任、阿波野秀幸氏(47)、田畑一也スコアラー(42)の二軍コーチ異動等も発表されている。さらに逆上れば、広島カープで引退表明したばかりの豊田清氏(40)を二軍コーチとして呼び戻しており、橋上秀樹(46)、秦真司(49)の両氏の招聘も決定。両氏はフロント内に新設される『戦略室』を主導していくという。
「コーチ人事や戦略室のこと? 清武英利GM兼球団代表によって決まりました」(前出・読売関係者)
スコアラーの集めてきたデータを解析し、かつ戦力補強を牽引していく重要ポストに指導者経験も浅い外部スタッフを据える人事は“冒険”に見えるかもしれない。しかし、渡辺会長は『人選』ではなく、「報告のなかったこと」に怒っていた。新体制の人事を進めたのは、清武GMだ。つまり、同会長は「清武GMに怒っていた」のである。
「清武さん? GM就任前から、精力的に動いているという印象を持っています。巨人のことだけではなく、NPB関連のことにも熱心ですし、自軍スカウトと一緒に学生野球を視察されたり…。(巨人が業務提携している)ヤンキースの要人が来日するときは必ず会食の場を設け、意見交換していると聞いています」(NPB関係者)
他球団の職員らも「仕事のできる人」との印象を持っていた。
今季敗因の1つに、外国人選手の不振が挙げられている。日本人選手扱いとなるラミレス、マイケルを加え、今季は『14人の外国人選手』を抱えていた。“大甘”に採点しても、及第点がつけられるのはラミレス、育成出身のロメロだけではないだろうか。7月に緊急獲得したフィールズはクライマックスシリーズの最中、二軍の若手と一緒にフェニックスリーグで練習しており、本塁打ゼロのライアルはシーズン終了を待たずに帰国…。バニスターは震災後に無断帰国し、『任意引退選手扱い』の手続きを取るしかなかった。
「クローザーとして期待されたアルバラデホですが、クイックモーションすらできない。日本球界にもっとも不向きなタイプと言っていい。何故、そんな投手を獲ったのか…」
在阪球団スコアラーが失笑していた。
結果論かもしれないが、ドラフトで菅野智之投手(22=東海大)を一本釣りするビジョンも同GMのもとで進められていた。この失敗も大きい−−。
こうした失敗を繰り返さないため、『戦略室』を立ち上げたのだが、結果がともなわなかったとき、どうなるか…。当然、その責任は清武GMが負わなければならない。同GMのフットワークの軽さと実行力の速さは他球団も認めていたが、いちばん怒らせてはならないご仁を怒らせてしまったようである。この“衝突”が理由で、「巨人のフロント改革も頓挫」なんてことにならないだろうか…。