「今回の同大会の開催国は日本ですからね。国内だったら、出張経費も割安で済むし(笑)、ジックリと斎藤クンを見るつもり」(在阪球団スカウトマン)
斎藤の他にも、早大・大石達也(4年生)、中央大学・沢村拓一(4年生)、東海大学・伊志嶺翔太(4年生)など、プロ注目の好投手が招集された。斎藤か、沢村か。それとも、大石か、伊志嶺か…。12球団スカウトマンは国際試合での内容を見て、1位指名選手を絞りきりたいとも考えていた。
そんな彼らを驚かせたのは、斎藤が想像していた以上に「対アメリカ」に強い執着心を持っていたこと。このまま、卒業と同時にメジャー挑戦なんてことにならなければいいのだが…。
そもそも、斎藤とアメリカは因縁浅からぬ関係にあった。
「1年生のときの日米大学野球で敗戦を喫し、2年生のときも決勝でぶつかって敗れています。アメリカに負けたままでは本人も悔しいでしょうし、リベンジしてやりたいと思っているんじゃないですか」(前出・同)
現時点で、斎藤の登板予定は7月30日の開幕戦。相手国は韓国だ。代表指揮官を務める近大・榎本保監督はローテーションを明かしていないため、斎藤にリベンジのチャンスがくるかどうかも分からない。前出の在阪スカウトマンは「榎本監督は連投のできる投手が好きだし、調子の良い投手をセットアッパーでどんどん使ってくると思う。たとえ斎藤でも韓国戦の結果が悪ければ、次の登板はない」と、投手起用法を予想する。
アマチュア球界関係者がこう続ける。
「斎藤クンがアメリカ戦に投げることができたとしても、その結果次第で進路が大きく転換するかもしれませんね。アメリカ戦に投げて勝てば、メジャーでやってみたいと思うかもしれないし、負ければ、リベンジで米挑戦なんてことになるかもしれないし(笑)」
同関係者は冗談めいた口調でそう語っていたが、12球団スカウトマンは笑うことができなかった。
斎藤は日本・プロ野球界への思いが希薄だとも言われている。その気があれば、甲子園で優勝した時点で挑戦していたはずで、当時のライバルたちが活躍するのをテレビで見ても他人事のように捉えているという。マー君こと楽天の田中将大投手に対しても、「彼は彼、自分は自分」と思っている。ライフプランで「アメリカで野球の勉強をして来ようかな?」と言い出すかもしれない。
「1年生で初めてアメリカ相手に投げたとき、米スカウトの評価は決して高くありませんでした。『甲子園大会を征したスター投手』ということで興味深く見ていた米スカウトも多かったですが、スピード、変化球ともに及第点は付かなかったはず」(前出・在阪スカウトマン)
こうした低評価が斎藤の闘争心を駆り立てているのだろう。プロ野球は日本のドラフトを経由しないで米挑戦するアマチュア選手に対し、日本帰還の際にペナルティーを課すことをすでに決めている。だが、その“警告”がどこまで効力があるのか疑問だ。
斎藤は『進路』について、「白紙」だと繰り返し語っている。その通りだとすれば、アメリカとの試合が大きな影響をもたらすのは間違いない。