ドラフトのキーマン・長村裕之編成部長が度々口にするのは「戦略としては、今後のチーム状態を見て判断することになるでしょう」なるコメント。意中の選手をライバル球団に悟られまいとしているのだろうが、「本命が二転三転している」との情報もある。
エース・金子千尋、近藤など主力投手が離脱していた前半戦は、即戦力の先発タイプに重点を置いていたそうだが、甲子園大会が始まったころ、「高校生を見終わってから」なるコメントもオリックス内部から出始めた。オリックスもビッグ3(藤岡貴裕=東洋大、菅野智之=東海大、野村祐輔=明治大)の視察にも熱心だった。彼らの入札・抽選に敗れたときは、将来性の高校生中心に切り換えるという意味だろうか。それとも、バランス良く、即戦力と高校生(将来性)の両方で行くのか…。関西圏には『外れ1位』ではもったいない社会人、大学生の逸材もいる。三菱重工神戸・守安玲緒投手と、大阪教育大・山本翔がスカウトの注目を集めている。
守安投手は2年前の富士大学時代もドラフト候補として名前が挙がっていた。53イニング連続無失点、リーグ新となる通算30勝など記録ラッシュで、社会人に進んでからはさらに評価が高まったようである。昨年夏のJABA北海道大会では救援登板するなり、いきなり自己最速に近い140キロ台後半を出した。すぐに肩が温まり、エンジン全開で投げられるタイプは、プロのリリーバーでもあまり多くない。また、山本投手は「4年生になって直球が速くなった」という。オリックスは『地の利』で、彼らに関する情報収集は終えている。
弱点の捕手を補うなら、小林誠司選手(同志社大)だろう。他球団との競合は避けられないので、即戦力投手枠ともなる「1、2位」のカードを1枚犠牲する覚悟も必要だ。オリックスが「チーム状況を見て」と繰り返すのは、岡田監督の意向が強く反映されるからでもある。T-岡田の前後を託せるクリーンアップ候補が急浮上してくるかもしれない。だとすれば、岡田監督の母校・早大後輩の渡邉侑也内野手だろうか…。(スポーツライター・飯山満)