そこで皆さんが気をつけないといけないのは、国内でしか展開できない企業の中に営業力の強さイコール、経営能力だと考える経営者が少なくないことである。
物とサービスが溢れかえる中でなかなか商品の「個性」を出すことが難しい。大手企業が参入する全ての業界にいえることであるが、大多数の中小企業は厳しい荒波の中で「商品の個性」を出すことにリスクを懸け、コストを懸け、必死に戦っている。
業界や業種によっては「商品やサービスの個性」を出すことが困難な場合があるが、それを放棄してしまうと勝負できるのは営業力のみになる。
例えば、営業マンなら1本1万円の価格もするミネラルウォーターでも売らねばならない、エスキモーにも冷蔵庫を販売できる力を持たなければならない…そんな営業力信仰が日本には根強く残っている。
独自の商品力がないため、「営業力」を商品として大手企業に提供し、販売代理店になる中小企業も多い。しかし「似たような商品」を扱う他の代理店もいれば、待っているのは激しい競争だけだ。仮に大手企業の代理店にならなくても「商品の独自性」が無い場合も同じことが言える。
「他社とは何が違うの?」
これを一言で返せる特徴があれば個性があるといえよう 。「顧客満足」や「他にはできないサービスをします」といった曖昧なイメージをメインに出しすぎるところはキツいと思ったほうが良い。
なぜならサービスの質が求められる日本において「顧客満足」は当たり前であって「商品やサービスの個性」とは違うのだ。残念ながらそこをわかっていない経営者も存在する。
下手に営業力があるため「ある程度の規模」までは売り上げが出て、最初の段階では商品力の重大な欠点に気付かない。会社を拡大しても売り上げの拡大ができると考え、穴だらけのチーズのようなプランを押し進めてしまう。
会社を拡大した場合、想定以上のコストが発生するのは世の常だ。 コストが増えても売り上げが増えれば問題は無いのだが、肝心の「商品やサービスの個性」が無かったり、「市場の特徴」を理解していないと「売り上げの壁」にすぐぶち当たる。
本来は会社を立ち上げる段階で詰めておくべき「商品やサービスの寿命」や「売り上げ規模の分岐点」といった計画が練られていないのだ。 営業力でカバーするには限界があることをよく理解していないと起こってしまうケースである。
営業力の強さを前面に出しすぎるのは非常にキケンな発想で、弱点を覆い隠して厚い雲になってしまう。
そうとは知らず会社の規模を拡大して経営が苦しくなった場合、早めに縮小するべきである。早期の撤退判断も経営者には必要だ。イケイケドンドンの経営で深手を負ってはいけない。キケンなシグナルが鳴っているかどうかを常にチェックし、問題があれば1日でも早く解決するスピード感のある行動が無ければ沈んでいくだけである。
営業力=経営能力と考える経営者は、会社を立ち上げる前に大手企業に勤めていた経験がある場合が多い。営業力を発揮して実績を残し、何らかのキッカケで独立して「同じ業界で自分の力は通用するから起業しよう…」そんなパターンである。
「勤めていた時の大手企業がどのように市場を見極め、商品やサービスを育て、個性を出したのか」そこまで考えが及んでいないのだ。 どんなに営業力があっても、「商品やサービスの個性」を産み出し、育てる方法を知らなければ、仮に独立して会社を立ち上げても、厳しい経営を強いられる。
営業力=経営能力
あなたの会社がそんな危険パターンに陥ってないか一度チェックしてみると良いだろう。