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お笑い芸人 豪快伝説 其の二十九『たむらけんじ』

 お笑い芸人。コメディアン。エンターテイナー。そんな彼たちがかつて刻んだ偉大なる伝説、爆笑列伝を紹介していく連載の29回目。トゥエンティーナインスバウトは、たむらけんじだ。

 自称「ただおもしろいだけの男」たむらけんじが、今年デビュー20周年を迎える。10月20日&21日には、大好きな兵庫・淡路島で盛大な記念フェスティバル『TKF(たむらけんじファミリー)大祭り』を開催する。

 実績は20年。だが、ネタをいちばん最後に作ったのは10年前。その後の10年間で、獅子舞にふんして東京に進出すると、成功。06年には、妻の親族から大阪で焼肉店「炭火焼肉たむら」を任されると、大成功。書いたネタは1本。考案したメニューは100種類。芸人としてのギャラは横ばい。店の年商は億超え達成。自分のなかの職業格差は、開く一方だ。

 長男が小学生のころ、パパが「おもしろくない芸人」であることをイジられたことがある。たむらは息子に言った。「おまえの親よりおもろいって、言い返したれ」。続けて、「パパがおもろくなれるために」ギャグを考えるよう指示。すると、息子がポツリと言った。「チャ〜」。皮肉にもそれが、たむけんの代名詞になった。

 この例からもわかるとおり、人のギャグを自分の手柄にする癖がある。獅子舞で上半身裸になった際、「話芸の神」「ネッシーはいてる」「時代に乗り遅れた」などの言葉が書かれているが、これらは、TKFのメンバーの作品。1,000円で競り落としているのだ。

 例の焼肉店は、着工からわずか2週間でオープンにこぎつけた。しかし、タレの交渉だけが、最後の最後まで難航した。意を決して、“太鼓持ち芸人”サバンナ・高橋茂雄を飲みに呼びだし。居合わせた企業関係者、社長に接待させた。後日、交渉が成立した。助太刀・高橋の手柄を、自分のものにした。

 たむらの処世術。生きるうえで、多くのヒントがありそうだ。(伊藤由華)

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