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話題の1冊 著者インタビュー 草薙厚子 『ドキュメント 発達障害と少年犯罪』 イースト新書 907円(本体価格)

 −−ここ数年、少年犯罪が報道されるときに、発達障害という言葉を聞くようになりました。

 草薙 私はもともと少年鑑別所で法務教官を務めていました。少年犯罪は、人間関係や家族関係などの環境が悪化して非行に走った少年・少女が犯すことが多かったのです。しかし普通の、中には勉強のできる子が突然、何の兆候もなく人を殺してしまうという事件が、1990年代後半から次々に起こりました。
 こうした不可解な事件は、ゲームやビデオからの影響が事件を誘発するという仮説から、いわゆる「ゲーム脳」だと思っていました。実際にその観点から取材を試み、雑誌や本にまとめたこともありました。しかし取材を進め、エビデンスを検証してみると、いわゆる「ゲーム脳」だけで少年犯罪を語ることはできないと思ったのです。
 そのとき「広汎性発達障害」という医学的な疾病が非行少年に多いことがわかりました。それは、児童精神科医である京都大学の十一元三教授に取材してわかってきたことです。実際に広汎性発達障害の人はゲーム、本、ビデオ、DVDなどに熱中する傾向があり、中でもホラーや残酷なものにはまりやすく、それらの映像や画像を教材であるかのように受け取り、その通りに実行してしまうということなのです。ですから、ゲームやDVDなどの影響を受けてしまうと、同じようなやり方で殺害するという思考になる場合が多いのです。その取材を経て、「広汎性発達障害の人は、視覚に飛び込んでくるものの影響を受けやすい」ということがわかったのです。

 −−発達障害の子は多いのでしょうか?

 草薙 文部科学省の調査によると、小学校40人のクラスに2〜3人はいる計算になりますね。その子たちは協調性もコミュニケーションもうまく取れない。ただ一方で暗記力などが素晴らしく、成績が良い子も多いので、実際の担任の先生からするとすぐにわかるらしいのです。ですから、親御さんに専門医の診断を受けてくださいとお願いするのですが「自分の子どもは違う」と言われてしまうそうです。その後、その子たちは普通の学校生活を送っていく中で、段々と不適応が起こってきてしまう。そうしたときに、自分が発達障害であることも自覚していないですし、親や周囲も理解してくれない。そこで追いつめられて犯罪に走ってしまう。でも、もし周囲が病気のことを理解し、適切な療育をすれば、普通の子が凶変して事件を起こすことはないですよね。
(聞き手:本多カツヒロ)

草薙厚子(くさなぎ あつこ)
元法務省東京少年鑑別所法務教官。テレビ局のアナウンサーなどを経て、現在はジャーナリスト、コメンテーターとして活躍。

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