陸上はすっかり冬本番となった一方で、海水温の変移は地上から2カ月遅れとされておりますから、まだギリギリ秋なんですな。
ということで、水温が下がりきる前に賑やかな釣りを楽しもうと、東京都は伊豆大島を訪れている次第であります。前回は、同行の仲間がアカハタを釣り上げ、早い段階の釣果に気分がさらに盛り上がったところまでをお話しました。
いわゆる「時合」という魚の食いが立つタイミングだったようで、その直後には、もう1人の仲間の竿にも竿ごと引きずり込まんとする強いアタリが! 明らかに大物と分かる強い引きに、渾身の応戦です。
しかし、ジリジリと糸を引き出された結果、やがて障害物に張り付かれてしまったとのこと。
「何とか出てきて!」
ドキドキしながら見守っていたものの、10分ほど放置してもまったく動かず…。泣く泣く仕掛けを切ることになりました。
掛けた本人が一番悔しいでしょうが、見ているほうも実に悔しいものです。
とはいえ、まだ戦いは序盤。これから夜明けまで時間はたっぷりとありますから、これから起こるであろうドラマに思いを馳せます。
んが、その後はず〜っと、かなりず〜っとヒマ…。誰にもアタリがないまま、静かな時間がすぎていきます。
「早々にいい魚がヒットすると、その後は期待に反した展開となる」
釣り師なら誰もが納得するであろう「あるある」なパターンにハマってしまったようです。
経験が浅い若かりし頃には「一発イイのが釣れたからといって、浮かれ上がって雑になってはイカン!」などと思い、殊更に平常心で丁寧な釣りを心掛けてみたのですが、結果は…。
自然というものは、まあ人知の及ばぬことばかりですな。
★沈黙を破って再び赤魚登場!
気怠い雰囲気が漂い始め、やがて日付も変わりました。そんな頃合で、先ほど悔しい思いをした仲間の竿が再び激しく揺れました。
すぐに竿を手に取ってヤリトリ開始。竿の曲がり具合はいい感じですが、仲間曰く「サメかなんかだよ」と、ややぞんざいな感じ。やがて浮上した魚にライトを当てると、派手な赤い魚影が見えました。またアカハタか!?
そのまま堤防上に抜き上げられたのは、伊豆の離島ではお馴染みともいえるホウライヒメジでした。40センチほどのよく肥えた魚体で、料理を本職としている仲間も非常に嬉しそうです。
このホウライヒメジ、黒潮の影響が強い高知、和歌山、そしてこの伊豆諸島などではハリに掛かる機会が多く、釣り人には比較的ポピュラーな存在です。
一般的な認知度は今ひとつですが、フランス料理の世界では“ルージェバルベ”と呼ばれて珍重される高級魚。最近では寿司や和食の分野でも少しずつ引き合いが出てきております。
この手の魚(ホウライヒメジ、オキナヒメジ、ウミヒゴイ)は身の甘みが強く、生でも、火を入れてもヨシと使い勝手がいいため、ファンが増えつつあります。
ということで、釣り上げた本人の手で血抜きが施され、クーラーボックスへ直行。帰宅後の宴会を彩る食材が1つ増えましたな♪
★和洋中を問わずどれも激ウマ
「いや〜、コイツはどう調理してもウマいから『ワールドカップ』でも催しちゃおうかな〜♪」
激ウマ外道に気をよくした仲間からは、おもむろにこんな発言が…。ん、ワールドカップってどういうこと!?
そして、帰宅後、先週紹介したアカハタの刺身を楽しんでいたところに、何とも豪華な大皿が運ばれてきました。
「日仏中米伊、5カ国の料理を盛りつけた皿鉢料理でござい! さぁ、ワールドカップ開幕じゃ〜」
★日本料理→刺身&煮付け
★仏料理→ムニエル
★中華料理→甘酢あんかけ
★伊料理→トマトソース付きフリット
★米料理→クリスピー
それに合わせるお酒も焼酎に紹興酒、ワイン、ラム酒など実に多彩。これはもう…、今夜は深酒必至です。
刺身は白身らしい旨味と甘みが感じられ、煮付けも滋味深く美味。お湯割りにした焼酎がグイグイ進みます。洋風の揚げ物もサクサク&ホッコリとして美味しく、バター香るムニエルも、中華風の味付けも、とにかくウマい!
一尾の魚でこれだけ多彩な食べ比べをした結果、「ホウライヒメジはどう調理してもウマい!」という至極真っ当な結論に至りました。
といっても、飲みすぎて宴会後半の記憶はありませんが…。
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三橋雅彦(みつはしまさひこ)子供の頃から釣り好きで“釣り一筋”の青春時代をすごす。当然の如く魚関係の仕事に就き、海釣り専門誌の常連筆者も務めたほどの釣りisマイライフな人。好色。