オールスターが存続の危機、日本シリーズにも難題山積と、NPBの二大財源に危険信号が点滅しているのに、いまだにセ、パの足並みが乱れている。今年からコミッショナー事務局、セ・リーグ連盟、パ・リーグ連盟の3局をコミッショナー事務局1局に統合した成果が表れていない。セ、パの会長職を廃止しただけで、2人分の合計年俸4800万円が削減できた。東京・千代田区内幸町のコミッショナー事務局の他に、東京・銀座の同じビルにそれぞれあったセ、パの連盟事務所も閉鎖、記録部だけが狭いスペースで1か所借り、銀座分室になった。セ、パ連盟事務所の家賃は月に100万円といわれているから、年間、1200万円の節約になる。ムダな経費の削減は着々と行われているのだが、セ・リーグ部とパ・リーグ部が一体になって何かやろうという意識がない。依然として変なライバル意識を燃やしている。
その最たるものが、クライマックス・シリーズ(CS)だろう。パ・リーグが一足先に04年からプレーオフとして実施。「プレーオフは大成功したんだから、セ・リーグも変なメンツにとらわれずに、やればいいんだ」とソフトバンク・王貞治監督(現ソフトバンク球団会長)が明言したように、経営の苦しくなったセ・リーグ球団も背に腹を代えられずに07年からCSを導入した。が、スポンサー探しはそれぞれ勝手にやっている。今年の例でいえば、パ・リーグのCSに「クリック証券」が冠スポンサーになっている。対して、セ・リーグの方は「セブン&アイホールディング」が冠スポンサーでなく、協賛企業だ。
「スポンサーが付けばどういう企業でもいいというわけではない。それなりの企業でなければ、リーグとしてのステイタスがある」というのが、セ・リーグ側の考え方だという。「DH制度」「予告先発」など、パ・リーグが導入した制度には背を向けるセ・リーグのプライドだ。かつては「人気のセ、実力のパ」といわれたように、興行的にはセ・リーグの一人勝ち。パ・リーグは常にリーグ存続の危機に立たされていた。
パ・リーグが交流試合の実現を訴え続けたのも、「巨人と試合をやれば、お客さんは来るし、1試合1億円以上のテレビマネーが入る」という計算からだった。それだけに、セ・リーグには「ウチがメジャーリーグでパ・リーグはマイナーリーグのようなもの」という見下ろした姿勢がある。それだけに、ポトシーズンゲームの導入でパ・リーグに後れを取ったバツの悪さもあるのだろう。
足並みの揃わないCSのスポンサー問題。元NPB関係者はこう嘆いている。「セ、パが一緒になって同じスポンサーを付けるようにすれば、大手企業を冠スポンサーにすることも可能になるのに。セ、パ交流戦に日本生命がスポンサーになってくれているようにね。実行委員会で何度もそう言っているのに、セ、パともに耳を貸そうとしないんだから、嫌になるよ」と。
冠スポンサー問題に止まらない。NPBの財政危機を乗り切るためには、CSを日本シリーズ同様に、NPB主催にするのがベストな方策だ。ところが、「NPBが新たな資金作りをするために、いろいろな新規事業を考えるのは当然だ」と12球団は言いながらも、「12球団の既得権は侵さないこと」という、虫の良い条件を付けているのだ。12球団の既得権を侵さないで新しい金儲けなどできるはずがない。パ・リーグだけがプレーオフを実施していた時代はともかく、両リーグで開催しているCSは、日本シリーズ出場権を決める試合なのだから、NPBが主催するのはむしろ当然だろう。
それなのに、12球団は目先の利益ばかりしか考えない。第1ステージの収益が2位チームに、第2ステージの分は1位チームに入る、おいしい現行のシステムを手放そうとしないのだ。「事の是非はともかくとして、セ・リーグにナベツネさん(巨人・渡辺恒雄球団会長)、パ・リーグには堤さん(義明氏=西武前オーナー)がいた時代のオーナー会議が懐かしい。堤さんはオーナー会議そのものにはほとんど出てこなかったが、2人の実力派オーナーが意見の一致を見れば、物事はどんどん決まっていったからね。FA制度の導入、ドラフトの逆指名などその典型だ」。セ、パのリーダーシップを握る実力派オーナー不在も、セ、パの足並みの乱れにつながり、NPBの財政破綻に拍車を掛けている。
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